ジルコニウムの主な用途|歴史や特徴についても詳しく解説

  • 「ジルコニウムの主な用途が知りたい」
  • 「ジルコニウムの特徴ってなんだろう」

などとお考えではありませんか?

本記事では、ジルコニウムの主な用途と併せて、ジルコニウムの歴史や特徴、ジルコニウム化合物の種類について詳しく解説します。

最後まで読むと、ジルコニウムがどのように活用されているかがわかります。

この記事の監修者

藤原 弘一

1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。

保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

ジルコニウムとは

ジルコニウムとは

ジルコニウムは、光沢のある銀色をした金属で、地球の地殻には約0.017%(170ppm)の割合で存在します。

この元素は、1789年にドイツの科学者クラプロートによって発見されました。

彼はスリランカから来たジルコン(ZrSiO4)という鉱石を分析中、それまで知られていなかった新しい元素の酸化物を見つけ出しました。

ジルコニウムという名前は、この鉱石の名前に由来しています。また、ジルコニウムを取り出すためにはジルコンの他に、バッデリ石(ZrO2)という鉱石も使われています。

ジルコニウムの歴史

ジルコニウムの歴史

ジルコニウムは1798年にマルティン・ハインリヒ・クラプロートがジルコンから初めて同定しました。

その後、1824年にイェンス・ベルセリウスがフッ化カリウムジルコニウムとカリウムの反応を利用して、この元素を純金属の形で分離することに成功しました。

また、1944年には日本の福島県塙町にある真名畑鉱山でジルコニウムの鉱脈が発見され、第二次世界大戦中という時期に国内で貴重な元素が見つかったことで大きな注目を集めました。

ジルコニウムの用途

ジルコニウムの用途

ジルコニウムの用途は以下のとおりです。

  • 自動車触媒
  • 工業用触媒
  • 構造材
  • 歯科材料
  • 電子材料
  • 耐火物・ブレーキ材
  • 燃料電池・酸素センサー
  • コーティング・表面処理材
  • アルミニウムろう付用フラックス

順番に解説します。

自動車触媒

用途例
自動車排ガス浄化触媒

この材料は、触媒用途において使用される貴金属(ロジウム、パラジウム、プラチナなど)の活性を高め、耐久性を向上させるために利用されます。

工業用触媒

用途例

  • 脱硝触媒
  • 石油精製触媒
  • 改質・シフト・部分酸化触媒

この材料は、有機化合物の生産過程における化学反応の促進(化学触媒)や、プラントで生成される有害なガスを浄化するための材料(環境触媒)として使用され、それらのプロセスをより効率的に行うために活躍しています。

構造材

用途例

  • 家庭用セラミックス包丁・はさみ
  • 工業用セラミックス切削工具
  • メカニカルシール軸受け
  • 粉砕メディア
  • フェルール

この材料は、摩耗に強く、磁気を帯びない特性を持ち、熱を伝えにくく、化学薬品にも強いという、多様な環境条件に適応する能力を有しています。

歯科材料

用途例
人工歯

この材料は金属アレルギーを引き起こすリスクが低く、時間が経っても劣化せず、人体との相性が良いため、安全性が高いとされています。

電子材料

用途例

  • セラミックコンデンサー
  • 圧電素子
  • 製鋼用酸素センサー
  • 高周波デバイス
  • セラミックス基盤
  • セラミックス筐体
  • リチウムイオン電池

この材料は、5GやIoTのような急速に発展するエレクトロニクス分野で求められる高い耐熱性と優れた電気特性を兼ね備えており、さらには電子部品の小型化にも寄与しています。

耐火物・ブレーキ材

用途例

  • 連続鋳造用ノズル
  • 電子部品焼成用セッター
  • 特殊金属溶解用ルツボ
  • 自動車用ブレーキパッド
  • 自動車用点火プラグ

耐火材料やブレーキ材において重要な要素である粒子の硬さやサイズに関して、この材料は一貫した高品質を保持しています。

燃料電池・酸素センサー

用途例

  • 大規模発電
  • 分散発電
  • 業務用コージェネ
  • 家庭用コージェネ
  • 自動車用酸素センサー

この材料は、燃料電池や酸素センサーなどに不可欠な、高いイオン伝導性を持つ特性を有しています。

コーティング・表面処理材

用途例

  • 塗料
  • 接着剤
  • レンズコーティング
  • ペーパーコーティング
  • 陶磁器用顔料
  • 自動車用表面処理剤

この材料は毒性がなく、摩耗、化学薬品、熱に強い耐性を持ち、また高い強度と優れた光学特性を兼ね備えているため、コーティングや表面処理に適した材料です。

アルミニウムろう付用フラックス

用途例
アルミニウムろう付

セシウムを含む非腐食性のフラックスを使用することで、はんだ付け作業を効率的に行えます。

参考:第一稀元素化学工業株式会社

ジルコニウム化合物の種類

ジルコニウム化合物の種類

ジルコニウム化合物の種類は以下のとおりです。

  • 炭酸ジルコニウムアンモニウム
  • 炭酸ジルコニウムカリウム
  • 酢酸ジルコニウム
  • 硝酸ジルコニウム
  • 酸化ジルコニウム

順番に解説します。

炭酸ジルコニウムアンモニウム

Bacote 20は、ZrO2で20%の割合で構成されるアルカリ性の溶液であり、水酸基によって架橋されたジルコニウムベースの陰イオン性ポリマー化合物です。

この化合物は、デンプン、タンパク質、アクリル、ラテックスなどのバインダーを不溶化させる架橋剤として利用されます。

炭酸ジルコニウムカリウム

ジルメル1000は、ZrO2を20%含むアルカリ性液体で、水酸基で結合されたジルコニウムポリマーを基盤とした陰イオン性のジルコニウム化合物です。

この化合物は、紙やボード紙のコーティング剤を不溶化するために用いられる架橋剤として機能します。

酢酸ジルコニウム

この化合物は、ZrO2を30%含む酸性の溶液であり、水酸基で連結されたジルコニウムベースのポリマーから成る、イオン的に中性のジルコニウム化合物です。

一般的には架橋剤としての用途で使用されます。

硝酸ジルコニウム

この溶液は、ZrO2を20%含み、pH1以下の非常に酸性な状態であり、陽イオン性のジルコニウム化合物です。

主に複合ジルコニウム化合物の製造や、触媒用のZrO2源として利用されています。

酸化ジルコニウム

使用目的に合わせて様々なタイプの酸化ジルコニウムが存在し、これには安定化されたものや部分的に安定化されたものが含まれます。

これらは顔料、光学材料、電子材料、ファインセラミックス、触媒などの分野で広く利用されています。

関連記事:【保存版】インコネルの特徴5選|種類や用途についても解説

ジルコニウムの特徴

ジルコニウムの特徴

ジルコニウムはチタン族のレアメタルで、高い強度、優れた耐食性、生体親和性を持っています。

1852℃という高い融点を持ち、耐熱性にも優れています。チタンと似た特性を有し、大気中での酸化による防腐膜の形成が可能ですが、チタンに比べてやわらかく靭性が低い一方で、耐食性は更に優れています。

耐食性に関しては、ステンレスやチタンを含む多くの金属よりも高く、酸やアルカリ、塩化物に対して非常に強いです。

しかし、900℃を超える高温では水蒸気と反応して脆くなり、水素ガスが発生して爆発のリスクがあります。

ジルコニウムは、熱中性子に対する反応が非常に低いため、原子力発電において放射化のリスクが低いという利点があります。

埋蔵量自体は貴金属ほど少なくはないものの、採掘可能な地域が限られており、製造コストが高いため、チタンよりは価格が高めに設定されています。

ジルコニウムは人体への影響があるのか

ジルコニウムは人体への影響があるのか

ジルコニウムの生物学的危険性は非常に低いとされています。

これは、ほとんどの酸やアルカリに溶けないため化学的に安定しており、金属アレルギーや中毒を引き起こすリスクがほとんどないことによります。

また、金属イオンが溶け出すことがないため、ガルバニック腐食や電池効果による電流発生の心配もありません。

ジルコニウムは、宝飾品としての使用が過去20〜25年ほどで広まりましたが、その酸化物であるジルコニアセラミックは、それ以前から人工骨や歯科材料に使用されている長い歴史があります。

ジルコニウムの特徴的な発色は、ジルコニウム表面にジルコニアの酸化膜を生成させ、構造色(モルフォ蝶やシャボン玉のように、表面の構造によって光の干渉を起こす)によるものです。

この発色は、歯科材料として使用されるジルコニア・酸化ジルコニウムと同じであり、塗料のような毒性はない安全な発色の仕組みです。

まとめ【ジルコニウムの用途はさまざま】

今回は、ジルコニウムの主な用途と併せて、ジルコニウムの歴史や特徴、ジルコニウム化合物の種類について詳しく解説しました。

ジルコニウムの用途は以下のとおりです。

  • 自動車触媒
  • 工業用触媒
  • 構造材
  • 歯科材料
  • 電子材料
  • 耐火物・ブレーキ材
  • 燃料電池・酸素センサー
  • コーティング・表面処理材
  • アルミニウムろう付用フラックス

さまざまな箇所で活躍されているのがわかります。

株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。

時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。

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