【保存版】ステライトとは?歴史や加工性についても徹底解説

「ステライトってどんな金属なの?」

「加工が難しいって聞いたけど、どうやって使うの?」

この記事では、以下の内容を紹介します。

  • ステライトの特徴
  • ステライトの加工方法
  • ステライトの用途

ステライトは、コバルトを主成分とする特殊合金です。高温でも硬度を保ち、摩耗や腐食にも強いため、発電所のバルブや航空機エンジン、医療器具など多くの現場で使われています。

加工が難しいという一面もありますが、用途に応じた適切な方法を使えば、耐久性の高い部品に仕上げられますよね。

この記事を読むことで、ステライトの基礎知識から実際の加工・用途まで、現場目線で理解できます。

材料選定や加工法で迷っているなら、まずはこの記事を最後まで読んでみてください。

この記事の監修者

藤原 弘一

1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。

保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

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ステライトとは

ステライトとは

ステライトはコバルトを主成分にニッケルやクロムを配合した耐摩耗合金です。

高硬度と自己潤滑性が両立し、高温でも硬さが下がりにくい点が強みです。主組成はコバルト約60%、クロム約30%、タングステンやモリブデンを少量加え、熱安定性を確保している。例えばろう付けした切削バイト、パルプ粉砕刃、原子力用バルブシートでは、1000 ℃近い環境でも刃先摩耗が少ない。

耐食性も優れ、酸性パルプ液や海水中でも錆びにくい。加工現場では粉末溶射や肉盛り溶接で母材に薄膜を形成し、部品の再生修理にも活用される。したがって、高荷重かつ高温の環境で長寿命をねらうとき、ステライトは有力な選択肢です。

ステライトの歴史

ステライトは、20世紀初頭にアメリカで開発された耐摩耗合金です。

発明者は冶金学者エルウッド・ヘインズで、1907年に特許を取得しています。

開発当初は、工具や耐摩耗部品の材料として注目され、切削工具やベアリング部品への応用が始まりました。

第一次世界大戦では軍用部品にも採用され、熱や摩耗に強い素材として評価が高まりました。

その後、航空機・エネルギー・原子力分野にも用途が広がり、1970年代には溶接や肉盛り技術との組み合わせによって再利用・修理用途にも使われるようになりました。現在も、ステライトは過酷環境下の材料として世界中で活用されています。耐久性を求める産業現場で長年にわたり選ばれ続けている点に、歴史の重みが表れています。

ステライトの特徴

ステライトの特徴

ステライトの特徴は主に3つあります。

  • 高温でも硬度が低下しにくい性質
  • 摩耗に強く長寿命
  • 酸や塩分に強く腐食しにくい

順番に解説します。

高温でも硬度が低下しにくい性質

ステライトの最大の特徴は、高温にさらされても硬度が安定している点です。

主成分のコバルトは高温下でも結晶構造が安定しており、熱で柔らかくなりにくい性質があります。

そのため、800℃を超える環境下でもステライトの硬度はHRC40〜50程度を維持します。

例えば、火力発電所の蒸気バルブ、鋳造用の型部品、航空エンジン部品などでは、熱による摩耗を最小限に抑える目的でステライトが採用されます。加熱されてもすぐには変形しないため、寸法精度や密閉性を求められる部品に向いています。

摩耗に強く長寿命

高硬度だけでなく、摩耗への強さもステライトの魅力です。

金属同士が接触して擦れたときに生じる「接触摩耗」や、粉体・スラリーの衝突による「衝撃摩耗」に対して、ステライトは高い耐性を示します。

具体的には、紙パルプ製造ラインのスクリュー、セメント製造の粉砕機、鉱山の掘削工具などで使用され、母材より3〜5倍長く使える実績があります。定期的な交換が不要になり、設備保全の負担を減らせる点も評価されています。

酸や塩分に強く腐食しにくい

ステライトはクロムを多く含むため、化学的な腐食にも強い特性を持ちます。

海水、酸性ガス、化学薬品と接触する環境でも、表面が劣化しにくい構造を保ちます。

例えば、海洋構造物のバルブシート、化学プラント内の撹拌翼、酸洗設備のスプレーノズルなどに使用され、他の合金では数ヶ月で腐食する場所でも、ステライトなら数年単位で使われています。

腐食が進まないため、製品のトラブルや事故リスクも減らせます。

ステライトの加工性

ステライトの加工性

ステライトの加工性はさまざまありますが、代表的なのをご紹介します。

切削加工の難しさ

ステライトは切削抵抗が高く、工具摩耗が早いため、通常の旋盤やフライス盤では効率が悪くなります。

主成分のコバルトは靭性があり、加工中に加工硬化が起きやすいため、刃物の先端が滑る現象が起きやすくなります。

例えば、超硬バイトを使っても50〜100mm程度の切削で再研磨が必要になる場合があります。

回転数を落とし、切削速度は10〜20m/min程度に設定するのが一般的です。さらに、潤滑油の選定も重要で、硫黄系や塩素系の高性能切削油が推奨されます。

したがって、切削加工には相応の設備と経験が求められます。

溶接と肉盛り加工

ステライトは粉末溶射や肉盛り溶接によって母材表面に施す方法が一般的です。

素材そのものを削り出すよりも、耐摩耗が必要な部位にだけステライトを加える方が経済的です。

例えば、工具鋼やステンレス母材にTIG溶接でステライト6を肉盛りし、その後研削で整形します。

溶接時にはひずみや割れが発生しやすいため、予熱や後熱処理が不可欠です。

溶接棒も専用のステライトロッドを使用し、電流や重ね幅を細かく調整する必要があります。

肉盛りによる修理や補強は、設備の寿命を延ばす手段として定着しています。

研削加工による仕上げ

切削では精度を出しにくいため、最終仕上げは研削加工で対応します。

ステライトは硬度がHRC50以上ある場合が多く、通常の砥石では焼けや摩耗が生じやすくなります。

レジノイド系のCBN砥石やダイヤモンド砥石を使い、周速を下げて加工熱を抑えるのが基本です。

例えば、バルブシートの密着面やピストンリングの外周部では、0.005mm単位の精度を要求されるため、自動化された高精度研削盤が使われます。

冷却液も大量に使用し、熱によるひずみを抑えながら寸法精度を確保します。

ステライトの仕上げには、高度な研削技術が不可欠です。

ステライトの用途

ステライトの用途

ステライトは耐摩耗性・耐熱性・耐腐食性を生かし、エネルギー・航空・医療など多くの分野で使用されています。

発電設備のバルブ・シート部品

ステライトは火力・原子力発電設備で多く使用されています。

高温高圧の蒸気環境でも変形しにくく、バルブやシート部品の寿命を延ばします。

例えば、蒸気制御弁のシートリングにはステライト6が肉盛りされており、600℃以上の過酷な環境でも、5年以上交換不要な例があります。

ステンレスや炭素鋼では短期間で摩耗が進みますが、ステライトなら摩擦による損耗が少なく、トラブルの発生を防げます。発電所のメンテナンス周期の延長に貢献するため、多くの電力会社が標準採用しています。

航空機エンジンの耐熱部品

高温にさらされる航空機エンジンでは、耐熱性と耐摩耗性が両立した素材が求められます。ステライトは、タービンブレードの先端保護部や、エンジン内部のリフターやカムなどに使われています。

特にターボファンエンジンでは、空気摩擦による熱や異物衝突への耐性が必要とされるため、コバルト系の合金が有利です。エンジンの信頼性は乗客の安全に直結するため、長期間の高温環境でも性能が変わらないステライトは、安全運航を支える材料の一つです。

医療用具や歯科機器

医療分野でもステライトは活用されています。

血液や体液にふれる機器では、腐食や金属溶出の問題が発生しますが、ステライトは耐食性と生体適合性に優れ、長期間の使用に耐えます。

例えば、人工股関節の摺動面や、歯科用ドリルの先端に使用されることがあります。

これにより、手術中の摩耗や摩擦熱の発生を抑え、機器の精度と衛生性を維持します。

生体内でも安定して使える合金として、今後も応用範囲は広がると考えられています。

まとめ

最後にもう一度、ステライトについておさらいしておきましょう。

  • ステライトは、コバルトを主成分とする高耐久合金
  • 高温でも硬度を維持し、摩耗・腐食に強い特性を持つ
  • 加工は難しいが、研削や肉盛りで対応が可能
  • 発電所のバルブ、航空エンジン、医療機器などで使用されている
  • 歴史は100年以上あり、現在も多くの現場で使用されている

過酷な環境でも性能を発揮する金属素材を探しているなら、ステライトは検討に値します。

耐久性、耐熱性、耐腐食性の三拍子そろった材料として、現場での信頼も厚い素材です。

部品の寿命を延ばしたい方や、高温下で使える金属を選びたい方は、ステライトの導入を考えてみてください。

株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。

時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。

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