【保存版】ハステロイのメリットとは?種類や活用事例についても解説
「ハステロイって何がそんなに特別なの?」そう思ったことはありませんか?
化学プラントやジェットエンジン、廃水処理設備など、過酷な環境で使用されるハステロイは、驚異的な耐食性と耐熱性を誇る合金です。
その一方で、「ステンレス鋼と比べて本当に必要なのか」「種類が多すぎてどれを選べば良いかわからない」といった悩みを抱えている方も多いはずです。
この記事では、ハステロイの具体的なメリットをわかりやすく解説し、その優れた性能がどのような場面で活用されているのかを事例を交えてお伝えします。
また、さまざまな種類のハステロイの特徴や選び方、注意点についても網羅しているため、選定や導入のヒントが得られるはずです。
ハステロイを正しく理解し、最適な選択をすることで、あなたのプロジェクトや装置の耐用年数を延ばし、長期的なコスト削減や信頼性の向上につなげることができます。
この記事を読んで、ハステロイが持つ可能性を最大限に引き出しましょう!
この記事の監修者
藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士
目次
ハステロイとは
ハステロイ(HASTELLOY®)は、アメリカのヘインズ社(Haynes International, Inc)が商標を保有するニッケルを主成分とした特殊合金の一種です。
この合金は、ニッケルにモリブデンやクロムを多量に加えることで、高い耐腐食性と耐熱性を実現しています。
優れた特性を持つため、多くの産業で幅広く使用されており、日本国内でも「ハステロイ」という名称は一般的な言葉として広く浸透しています。
成分に含まれるモリブデン、クロム、鉄の割合によって、「ハステロイB」「ハステロイC」といった種類に分類され、それぞれが特定の用途や環境に適した性能を発揮します。
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ハステロイのメリット
ハステロイのメリットは以下のとおりです。
- 耐食性・耐熱性が高い
- 鍛造性や溶接性が良い
- 析出硬化型合金
- 性能が高い
順番に解説します。
耐食性・耐熱性が高い
ハステロイは「耐食性合金」として知られ、その優れた耐腐食性能により、腐食防止のための塗装やめっき加工が不要な点が大きな特徴です。
さらに、1,100度もの高温にも耐えられる優れた耐熱性を備えており、高温環境下でもその強度をしっかりと保つことができます。
鍛造性や溶接性が良い
ハステロイは削る加工にはあまり適していないものの、鍛造加工や溶接加工がしやすいという特徴があります。
鍛造加工とは、金属に圧力を加えながら叩くことで、内部の隙間をなくし、材料の強度を高める方法です。
さらに、溶接加工では金属を溶かして形状を整えるため、加工が難しいとされるハステロイでも比較的容易に取り扱うことが可能です。
析出硬化型合金
析出硬化型合金とは、合金内部で分散した粒子によって新しい構造や相が形成されることで、素材の強度が向上する特性を持つ合金を指します。
ハステロイもこのタイプの合金に属しており、高い硬度を備えている点が大きな利点です。
性能が高い
耐食性と耐熱性に優れた材料として知られるチタンですが、ハステロイはそれを凌駕する性能を持つ点が特徴です。
特に、急激な温度変化、高圧、または化学的に厳しい環境など、極めて過酷な条件下でもその性能を安定して発揮します。
チタンが対応できないような苛酷な環境にも適応できるため、ハステロイはさまざまな工業分野で重宝されている材料です。
ハステロイのデメリット
ハステロイのデメリットは以下のとおりです。
- 加工が難しい
- コストがかかる
順番に解説します。
加工が難しい
ハステロイは硬度が高いため加工が難しく、加工中に硬化する性質も持つことから、仕上げるまでに時間を要します。
また、熱伝導率が低いため加工時に熱がこもりやすく、その結果、使用する工具の寿命が短くなる傾向があります。
コストがかかる
ハステロイはその優れた特性を実現するために、高価なニッケルやモリブデンを多量に含んでいるため、ステンレス鋼と比較するとコストが数倍に上ることがあります。
ハステロイの種類
ハステロイの種類は以下のとおりです。
- ハステロイB-2
- ハステロイC-22
- ハステロイC-276
- ハステロイX
順番に解説します。
ハステロイB-2
ハステロイB-2は、硫酸や塩酸といった強酸に対して特に優れた耐腐食性を発揮します。
この特性は、化学プロセス産業において極めて重要であり、酸による腐食が問題となる環境でのパイプラインや反応器の材料として広く採用されています。
さらに、ハステロイB-2は高温環境でもその耐腐食性能を維持できるため、熱交換器や蒸発器といった装置の素材としても適しています。
ハステロイC-22
ハステロイC-22は、多様な化学物質に対して高い耐腐食性能を発揮し、特に酸化剤に対する優れた耐性を持っています。
その特性から、塩素や過酸化水素などの強力な酸化剤が使用される化学プラントや廃水処理施設で広く利用されています。
さらに、優れた耐熱性を持つため、高温環境での腐食が問題となるプロセスにおいても、長期的な信頼性を確保する材料として選ばれています。
ハステロイC-276
ハステロイC-276は、海水、塩化物、酸化剤、還元剤など、さまざまな腐食因子に対して優れた耐食性を示します。
その高い汎用性により、化学工業や石油・ガス産業、環境技術の分野で広く利用されています。
特に、腐食と摩耗が同時に起こる過酷な環境でその性能を最大限に発揮し、装置の寿命を大幅に延ばすことが可能です。
ハステロイX
ハステロイXは、高温環境下での優れた強度を持ち、酸化やカーバイド沈殿に対して高い耐性を発揮します。
この特性から、航空宇宙産業で特に重要視されており、ジェットエンジンの高温部やガスタービンの部品に広く採用されています。
さらに、その高い耐熱性により、工業炉などの過酷な高温条件下で使用される装置の材料としても適しており、長期間にわたる安定した性能を提供します。
ハステロイの選び方
ハステロイを選ぶ際には、使用する環境や目的に応じて最適な種類を選定することが重要です。以下のポイントを考慮して選びましょう。
1. 使用する環境に応じた選定
- 腐食性環境: 強酸性環境(塩酸や硫酸など)では、ハステロイB-2やC-276が適しています。
- 高温環境: 高温下での強度が求められる場合は、ハステロイXがおすすめです。
- 酸化剤の存在: 酸化性の強い環境では、ハステロイC-22が優れた性能を発揮します。
2. 耐熱性の要件
- ハステロイは種類によって耐熱温度が異なります。特に高温にさらされる用途(熱交換器、ジェットエンジン部品など)には、耐熱性の高い種類を選択してください。
3. コストパフォーマンス
- ハステロイは一般的なステンレス鋼よりも高価なため、必要とする性能を過不足なく満たす種類を選ぶことでコストを最適化できます。
4. 加工性の確認
- 加工方法によって選ぶべき種類が異なります。たとえば、溶接が必要な場合は溶接性に優れた種類を選び、削り加工を行う場合は加工性を考慮してください。
5. 信頼できる供給元の選定
- 品質が安定した材料を確保するために、信頼性のあるメーカーやサプライヤーから調達することが重要です。
6. 用途別の選択例
- 化学工業: 腐食性の液体を扱う装置にはハステロイC-276。
- 航空宇宙産業: ジェットエンジンやガスタービンにはハステロイX。
- 廃水処理設備: 酸化剤への耐性が求められる場合はハステロイC-22。
これらのポイントを踏まえ、必要な性能をしっかりと見極めて最適なハステロイを選びましょう。
ハステロイの活用事例
ハステロイは、優れた耐食性と耐熱性を持つことから、高温や腐食が発生する環境で広く活用されています。
具体的には、化学プラントの装置部品やポンプ、バルブといった化学装置の重要な部材として使用されています。
また、私たちの身近な例では、航空機のジェットエンジンに採用されています。ジェットエンジンは稼働時に非常に高温になるため、耐熱性の高い素材が不可欠であり、ハステロイがその役割を担っています。
さらに、酸洗設備や製紙産業、化学品精製、廃棄物処理、核燃料再処理施設、石油化学産業など、多岐にわたる分野でも使用されています。
これらの用途では、腐食や高温に耐える必要があるため、ハステロイの特性が存分に活かされています。
まとめ
ハステロイの主なメリット
- 高い耐食性: 強酸や塩化物、酸化剤・還元剤に対して優れた耐性を持ち、腐食防止加工が不要。
- 優れた耐熱性: 最大1,100度の高温環境下でも強度を保持し、高温プロセスに適合。
- 加工性の良さ: 鍛造性や溶接性に優れ、複雑な装置の製作が可能。
- 高い硬度: 析出硬化型合金として、極めて高い強度と耐久性を発揮。
- 汎用性: 化学、石油、航空宇宙、廃水処理など幅広い産業で活躍。
主な活用事例
- 化学プラント: 腐食性の高い酸や塩素にさらされるパイプラインや反応器の材料。
- 航空宇宙産業: 高温環境が要求されるジェットエンジン部品やガスタービンの構造材。
- 廃水処理施設: 酸化剤への耐性が求められる装置。
- その他の産業: 製紙、化学品精製、核燃料再処理、石油化学など、腐食と高温が問題となる環境。
ハステロイの選択肢は種類により異なり、ハステロイB-2(強酸耐性)、C-22(酸化剤耐性)、C-276(多用途)、X(高温強度)が用途に応じて使い分けられます。その優れた特性と汎用性により、さまざまな産業分野で不可欠な素材となっています。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
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