スーパーインバーの成分とは?インバーとの違いや用途別の特性を徹底解説
スーパーインバーは、温度変化による膨張が極めて少ない「低膨張合金」として、精密機器や宇宙・医療分野などで使われています。
その特性を支えているのが、鉄とニッケルを中心とした独自の成分構成です。
しかし、メーカーによって成分比率が異なることや、用途別にカスタマイズされることもあり、素材選定の際に迷う人も少なくありません。
この記事では、スーパーインバーの成分に関するよくある疑問をわかりやすく解説し、用途に合った最適な選び方のヒントをお伝えします。
この記事の監修者

藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

目次
スーパーインバーとは?
スーパーインバーは、鉄とニッケルを主成分とした合金です。温度による寸法変化がきわめて少ないため、精密な構造部品に使われます。
温度変化に強い「低膨張合金」の代表格
スーパーインバーは、熱による寸法変化を極限まで抑えた合金です。
熱膨張を抑えた材料は、気温差によって寸法や形が変わることがないため、精密さが求められる現場に適しています。
その理由は、鉄とニッケルの比率を調整することで、常温付近での熱膨張係数を最小化する設計がされているからです。とくにニッケルが36%前後含まれている点が、安定性を生み出す大きな要素になります。
例えば、半導体の製造装置やレーザー干渉計に組み込まれる部品には、数ミクロンのズレすら許されない場面があります。スーパーインバーは、そうした超高精度な用途に応える材料として使われています。
熱に強いだけでなく、寸法の安定性を確保できる点も評価されている理由です。
精密機器や宇宙産業での需要と成分の関係性
スーパーインバーは、宇宙関連装置や航空機の部品など、極限環境でも安定した性能が求められる分野で使われます。高精度を求められる背景には、その成分が密接に関係しています。
鉄とニッケルの合金は、熱膨張の変化がきわめて少ない温度帯を持っています。この特性によって、宇宙空間での極端な温度変化や、大気圏再突入時の急激な加熱にも対応しやすくなります。
例えば、人工衛星のジャイロセンサーを固定する架台や、宇宙望遠鏡のレンズ枠には、温度変化によって形が変わらない材料が使われています。スーパーインバーは、そうした用途において選ばれる代表的な合金です。
また、光学装置や計測機器の筐体としても使われるほど、成分がもたらす安定性には信頼が寄せられています。構成元素の比率が、精密性に直結するという特長があります。
スーパーインバーの主成分と化学的特徴

スーパーインバーは、鉄とニッケルを主成分とする低膨張合金です。
化学的な組成が極めて安定しており、温度変化による寸法変化を抑える性質を持ちます。精密機器などに活用されています。
鉄(Fe)とニッケル(Ni)を主成分とする理由
スーパーインバーの主成分は、鉄とニッケルです。この2つの金属が使われる理由は、熱膨張を抑えるための磁気的な性質にあります。特にニッケルが約36%の割合で加わると、鉄の熱膨張係数が急激に下がります。これを「インバー効果」と呼びます。
具体的には、鉄だけでは常温から高温にかけて大きく膨張しますが、ニッケルを適量加えると、常温付近での膨張が極めて小さくなります。この現象を活かし、スーパーインバーはさらに成分を調整して精度を高めています。
精密な金型部品や医療用機器の部品に用いられるのは、この熱膨張の少なさが理由です。寸法変化を抑えたい場面で鉄とニッケルの組み合わせは非常に理にかなっています。
一般的な成分比率とそれがもたらす物性
スーパーインバーの一般的な成分比率は、鉄が約63〜65%、ニッケルが約35〜37%です。このバランスが熱膨張を極めて小さく抑える鍵となります。
特に、ニッケルが36%付近になると、鉄の結晶構造と磁気特性が変化し、膨張を抑制します。
この成分設計により、25℃付近での線膨張係数は1×10⁻⁶/℃以下になります。これはステンレスやアルミ合金の約10分の1に相当します。つまり、温度が変わっても形がほとんど変わらない材料として、極めて優れています。
例えば、電子顕微鏡の内部部品や、半導体製造装置の構造材などに用いられています。1ミクロン以下の誤差を許容しない環境では、スーパーインバーの成分設計が信頼性の支えになります。
スーパーインバー成分に関するよくある質問

スーパーインバーに関して寄せられる疑問の中でも、成分に関する質問は特に多く見られます。成分比率や調整の可否、情報の確認方法などについて詳しく解説します。
成分比率はメーカーで異なる?
結論から言えば、スーパーインバーの成分比率はメーカーによって多少異なる場合があります。理由は、使用目的や加工特性に合わせて微調整されることがあるためです。
スーパーインバーは、一般的に鉄とニッケルを約64対36の比率で配合した低膨張合金ですが、用途によってはコバルトやクロムなどの微量元素が追加されます。これにより、膨張率や強度、磁性などの特性を最適化することが目的です。
例えば、航空宇宙産業で使用されるスーパーインバーでは、熱安定性を高めるために微量のモリブデンが加えられる場合があります。一方で、電子部品用では加工性を重視した配合が採用されることもあります。
つまり、同じ「スーパーインバー」という名前でも、配合の違いが存在するという点を理解しておきましょう。
成分調整による性能カスタマイズは可能か?
スーパーインバーは、成分調整によって性能を目的に応じて変えることが可能です。理由は、鉄とニッケルの基本構成に加えて、微量元素を加えることで特性が大きく変わるからです。
性能カスタマイズの具体例として、以下のようなケースがあります。
- 寸法安定性をさらに高めたい場合:炭素量を極限まで下げる設計
- 切削加工性を改善したい場合:硫黄や鉛を極微量添加
- 高温環境で使用する機器:コバルトやモリブデンの添加による耐熱強化
ただし、成分調整には材料費の変動や機械加工の難易度上昇といった副作用もあります。希望する用途に応じて、メーカーと仕様を相談しながら選ぶことが現実的です。
性能を最大限引き出したい場合は、汎用品ではなく仕様調整された材料を検討しましょう。
成分情報はどこで確認できるのか?
成分情報を確認する方法として最も確実なのは、メーカーが発行する「成分証明書」や「材料ミルシート」の入手です。これらの書類には、ロットごとに検査された正確な化学成分が記載されています。
通常、以下の手順で確認が可能です。
- 加工業者または材料仕入れ先にミルシートの発行を依頼
- 成分表記がJISやASTMなどの規格準拠かどうかを確認
- 表記されている成分が、希望用途に適しているかをチェック
また、企業の公式サイトで成分概要が掲載されている場合もありますが、実際に納入されるロットとは成分が異なる可能性があります。目安として活用するのは問題ありませんが、精密な確認が必要な場合はミルシートの確認が必須です。
製品選定の初期段階では、こうした書類の入手可否も重要な判断材料となります。
まとめ
スーパーインバーの成分は、鉄とニッケルを主軸にしつつ、微量元素の添加や成分比率の調整によって特性が変わります。
性能を最大限に引き出すためには、用途に応じた配合の違いを理解することが重要です。正確な成分を把握するには、ミルシートなどの正式な証明書の確認が不可欠です。
正しい理解と情報の取得が、高性能材料の効果を最大限に引き出す鍵です。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
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