パーマロイとは何か?電子機器に欠かせない理由を徹底解説
「パーマロイってどんな素材なの?」
「磁気シールド材として何が優れているの?」
このような疑問を持つ方に向けた記事です。
この記事でわかること
- パーマロイの特徴と仕組み
- パーマロイが使われている主な用途
- 他の磁性材料との違い
パーマロイとは、磁場に対して非常に敏感に反応する特殊な合金です。
医療機器や電子機器にとって、磁気の影響を正しく制御することは動作の安定性に直結します。
そのため、磁場をしっかり扱える素材が必要です。パーマロイは、高い透磁率と低保磁力をあわせ持ち、磁気をスムーズに通しながらも磁気を残さないという性質があります。
磁気のコントロールって難しそうに感じますよね?
この記事では、磁気特性に詳しくない方でも、パーマロイの基本から用途までを順番に理解できるように解説しています。
精密機器や磁気センサーなどの分野に関心がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の監修者

藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

目次
パーマロイとは

パーマロイとは、ニッケルと鉄を主成分とする磁性合金の一種です。磁場に対して非常に反応しやすい性質を持ち、磁気を伝える効率が高いという特徴があります。
磁気に関わる電子機器では、外からの磁場が影響を与えると誤作動が起こるおそれがあります。そのため、磁場を制御する材料が必要です。パーマロイはその役割を果たします。
例えば、MRI装置のような医療機器や、電子顕微鏡、通信機器の内部部品などに使われています。これらの機器では、外部からの微弱な磁場を正確に制御しなければ、精度が保てません。
ニッケルの含有率が多く、高い透磁率と低い保磁力をあわせ持つパーマロイは、磁場を通しやすく、かつ磁気を残しにくい素材です。そのため、磁気ノイズの遮断や、微小磁場の検知に最適です。
磁気制御が求められる場面では、パーマロイの活躍が欠かせません。
パーマロイの主な用途

パーマロイはその磁気特性を活かして、磁気シールド材や電子部品、センサー、トランスのコアなど、精密機器や産業機器に広く利用されています。
- 磁気シールド材としての活躍
- 電子機器内部のノイズ対策部品に
- 変圧器・トランスの高効率コア材に
- 磁気センサーの感度向上に寄与
順番に解説します。
磁気シールド材としての活躍
パーマロイは、外部からの磁気干渉を遮断する優れた磁気シールド材として使われています。
医療機器や分析装置、通信機器など、磁場の影響を受けやすい精密機器では、わずかな磁気ノイズが誤作動の原因となることがあります。
パーマロイの高い透磁率と低保磁力により、外部磁場を吸収しつつ残留磁気を抑えることが可能となり、装置の安定性と信頼性を確保するために欠かせない素材となっています。
電子機器内部のノイズ対策部品に
電子機器の内部では、微弱な信号処理や磁場の制御が行われるため、外部や内部からのノイズを効果的に抑える必要があります。
パーマロイは、電子顕微鏡のレンズ周辺や、オーディオ機器、医療用診断装置などにおいて、磁気シールドケースやノイズ抑制部品として使用されます。
こうした用途では、パーマロイの磁気干渉抑制力が、データの精度や音質、映像の安定性を保つ要素となります。
変圧器・トランスの高効率コア材に
変圧器やトランスでは、磁場の変化をエネルギーとして利用するため、磁気特性の優れた材料が求められます。
パーマロイはその高透磁率と磁気エネルギー伝達効率の高さから、コア材として優れた性能を発揮します。
電力変換効率が向上することで、熱損失が減り、装置の小型化や省エネ化が進むほか、変圧器の寿命延長にも寄与します。
安定した電力供給や高信頼の電子回路に不可欠な存在です。
磁気センサーの感度向上に寄与
パーマロイは、微細な磁場の変化を正確に捉える磁気センサーにおいて、感度と応答性を高めるための素材として使用されます。
自動車の位置検知センサーや電子コンパス、地磁気センサー、医療モニタリング装置など、高精度な磁気検出が求められる機器では、わずかな磁気変動を増幅するパーマロイの特性が大きな強みとなります。
高信頼性かつリアルタイム性の高い測定を実現するキーマテリアルです。
パーマロイの特性

パーマロイの特性は以下のとおりです。
- 高い磁化感度を誇る「透磁率」
- 磁力が残らない「低保磁力」
- 外部磁場を遮断する「磁気シールド性能」
- 微弱磁場を増幅する「集磁作用」
- 熱処理によって性能がさらに向上
順番に解説します。
高い磁化感度を誇る「透磁率」
パーマロイは非常に高い透磁率を持つ合金で、わずかな磁場にも鋭敏に反応します。
透磁率とは、磁場の変化に対してどれだけ効率よく磁化できるかを示す指標です。
この性質により、微細な磁場を正確に検知する必要がある電子機器やセンサーなどの分野で重宝されています。高感度な磁気応答が求められる場面において、パーマロイはその性能を発揮します。
磁力が残らない「低保磁力」
パーマロイは磁場が取り除かれるとすぐに磁力を失う「低保磁力」の性質を持っています。つまり、外部磁場にさらされたあとでも磁化がほとんど残らず、残留磁気の影響が極めて小さいのです。
この特徴は、繰り返し磁化・消磁が必要な磁気センサーやリセット機構を持つ電子デバイスなどで非常に重宝されます。
制御性の高い磁気特性を求める設計に最適な素材といえます。
外部磁場を遮断する「磁気シールド性能」
パーマロイは外部の不要な磁場や磁気ノイズを吸収・遮断する優れた磁気シールド材です。その高い透磁率によって磁場をスムーズに取り込み、低保磁力によって磁力をほとんど残しません。
このため、電子機器や医療機器などの精密な装置を磁気干渉から守るために使用されます。磁気環境の安定性が求められる現場において、パーマロイの磁気シールド性能は非常に信頼されています。
微弱磁場を増幅する「集磁作用」
パーマロイは、外部から加えられた磁場を効率的に取り込み、内部で強く磁化する「集磁作用」を持ちます。
この性質により、磁気センサーでは微小な磁場の変化をとらえやすくなり、トランスやインダクタでは効率のよい電磁変換が実現できます。
つまり、入力される磁場を増幅し、有効な出力に変える能力に優れているため、電気・電子分野での応用に適した素材といえます。
熱処理によって性能がさらに向上
パーマロイは「磁性焼鈍」と呼ばれる熱処理によって磁気性能を大きく向上させることができます。
具体的には、1000℃を超える温度で処理を行うことで、透磁率がさらに高くなり、より高感度な磁気応答を得られるようになります。
この処理により材料内部の組織構造が整えられ、磁気特性のばらつきが減少します。
高性能を求められる用途においては、熱処理されたパーマロイが選ばれることが多いです。
まとめ
最後に、この記事の内容をもう一度まとめておきます。
- パーマロイは、ニッケルと鉄からなる磁性合金
- 高い透磁率と低い保磁力を持つ
- 医療機器や通信機器などで磁気シールド材として活躍
- 変圧器やトランスのコア材に使われる
- 磁気センサーの感度を高める素材としても有用
磁場の影響を受ける装置は、パーマロイのような素材がないと安定して動作しません。製品の性能を左右する場面で使われるため、特性や用途を正しく理解することが大切です。
この記事を参考に、必要に応じて最適な磁性材料の選定や、パーマロイの活用を検討してみてください。
パーマロイの基礎を押さえることで、精密機器の開発や設計の質が一段と向上します。電磁環境の対策や磁気制御を考える方にとって、今後の判断材料になればうれしいです。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
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