【保存版】ローレット加工とは?メリット・デメリットも詳しく解説
「金属部品についているギザギザ模様は何だろう?」
「ローレット加工の種類やメリット・デメリットが知りたい」
このような疑問をもつ方に向けた記事です。
この記事を読むと以下の点がわかります。
- ローレット加工の基本的な意味と目的
- 切削式と転造式の加工方法のちがい
- ローレット加工の利点と注意すべき点
ローレット加工は、金属製品の機能性や操作性を向上させる加工方法です。加工方法には種類があり、それぞれに特徴があります。製品の用途や求める仕上がりに合わせて、適切な方法を選ぶ必要があります。
この記事を読むことで、ローレット加工の基礎知識が身につき、2つの主な加工方法のちがいや、それぞれの利点・注意点を理解できます。
ローレット加工について、さっそく知識を深めていきましょう。最後まで読んでみてください。
この記事の監修者

藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

目次
ローレット加工とは

ローレット加工とは、金属の表面に細かい凹凸や切り込みを入れる加工方法です。
一般的には、旋盤で回転するワーク(加工物)に専用工具を押し当てます。
これにより等間隔の溝を刻み、表面に凹凸模様を作り出すのです。ピッチ(溝の間隔)や深さ、角度を変えれば、様々な模様を形成できます。
この加工の主な目的は、「すべり止め」と「回り止め」です。バーやグリップなどによく用いられ、落下防止に役立ちます。また、力を効率よく伝える効果も期待できるでしょう。つまみのように、細かな調整が必要な部品にも適しています。
【ローレット加工】加工方法

切削加工
切削式ローレット加工は、角度の付いた溝があるローラー状工具で削る方法です。平目(直線模様)用ならローラーは1つ、綾目(ひし形模様)用なら2つ付いています。
この方法では、Z軸方向(長手方向)へ連続して削ることが可能です。そのため、長い形状のワークなども効率良く加工できるでしょう。加工によりワークの直径は少し細くなり、切り屑が発生します。
転造式に比べて仕上がりは綺麗ですが、注意点もあるのです。切り屑が加工部分に絡まることがあるため、その際は切削油を使用しながら作業します。
この加工法のメリットは、機械やワークへの負荷が少ないことです。幅広い形状や材質に対応できる点も長所と言えます。ただし、工具の形状が干渉してしまう部分には加工できません。また、転造式に比べて、工具など関連部品のコストは高くなる傾向にあります。
転造加工
転造式ローレット加工は、溝付きローラーで圧力をかけ、材料を塑性変形させる方法です。複数回ローラーを転がす必要があり、加工幅もローラー幅に限られます。そのため、長尺物の加工は切削式より時間がかかるでしょう。
加工前の径(下径)の精度管理も、仕上がりを左右する重要なポイントです。下径が適切でないと、模様が潰れたり浅くなったりします。
加工後は山の部分の径が増し、切り屑は出ません。ただし、機械やワークへの負荷は切削式より大きいです。細長い形状、薄物、硬質材、樹脂などには不向きな加工法と言えます。
ローレット加工のメリット

転造式に比べて機械への負荷が少ない
切削式は切りくずを出しながら削るため、加工時の抵抗が抑えられます。その結果、工作機械にかかる負担は小さくなるのです。
細長い材料や中空の材料加工にも適している
これは、機械への負担が少ないことと関係があります。
また、切削式では加工による材料の盛り上がりがほとんど発生しません。そのため、肉厚の薄いものや、細長い形状の加工に向いていると言えるでしょう。
長いワークの加工が得意
転造式は一度に工具の幅しか加工できません。一方、切削式は連続して削り進めることが可能です。このため、特に長いワークの加工に適しています。
ローレット加工のデメリット

ローレット加工のデメリットは主に2つあります。
- 金銭面
- メンテナンス
順番に解説します。
金銭面
ローレット加工は、製品本来の目的とは別に施されることが多いです。主な狙いは、製品の使い勝手を良くすることにあります。
例えばカメラの場合、本来の目的は「綺麗に撮る」ことです。ローレット加工の有無は、写真の綺麗さには直接影響しません。極端な話、ローレット加工がなくても写真は撮れます。加工のない部品で作れば、コストも下がるでしょう。
メンテナンス
ローレット加工の部分は細かい凹凸があるため、汚れやゴミが溜まりやすいです。布やティッシュで拭こうとすると、繊維が絡まってしまうことがあります。
清掃する際は、ブラシのような道具で汚れを掻き出す必要があるでしょう。
ローレット加工のよくある質問(FAQ)

Q1:ローレット加工はどんな金属にも対応できますか?
基本的には鉄・ステンレス・アルミ・真鍮など幅広い金属に対応可能です。ただし、極端に硬い金属や脆い素材では加工が難しくなるため、工具の選定や加工条件の調整が重要です。樹脂にも対応可能な場合があります。
Q2:ローレットの深さはどれくらいが一般的?
一般的なローレットの深さは0.2mm〜0.5mm程度です。製品の用途や手触りの強さに応じて調整されます。深すぎると変形やバリが発生する可能性があるため、素材や加工方法に応じた設計が重要です。
Q3:表面処理(メッキなど)との組み合わせは可能?
はい、ローレット加工後にメッキやアルマイト処理を施すことは可能です。ただし、処理によってローレット部の凹凸が埋まりやすくなるため、事前に仕上がりを想定した寸法調整や処理工程の確認が必要です。
Q4:自分でローレット加工する方法は?
手動旋盤やローレットホルダー付きの工具を使えば、個人でもローレット加工は可能です。市販のローレット工具と旋盤があれば対応できますが、材料の固定や均等な圧力のかけ方には熟練が必要です。
まとめ
ローレット加工について、重要な点を以下にまとめます。
- ローレット加工とは: 金属などの表面に細かい凹凸模様をつける加工技術です。主な目的は、グリップ部分などの「すべり止め」や、部品同士の空回りを防ぐ「回り止め」です。
- 主な加工方法(切削式): ローラー状の工具で削りながら模様を形成します。切り屑が出ますが、仕上がりが綺麗で機械への負荷が少なく、長尺物や薄物、中空材の加工に適しています。ただし、工具コストは比較的高めです。
- 主な加工方法(転造式): ローラーで圧力をかけて材料を変形させます。切り屑は出ませんが、機械への負荷が大きく、加工幅も限られます。下径の精度管理が重要で、細長いものや硬質材には不向きです。
- メリット・デメリット: すべり止め効果による操作性向上などがメリットですが、加工コストの増加や、凹凸部に汚れが溜まりやすくメンテナンスが必要になる点がデメリットとして挙げられます。
- 適用範囲: 鉄、ステンレス、アルミなど多くの金属に対応可能ですが、材質や硬さによって最適な工具や加工条件を選ぶ必要があります。
製品に付加価値としてすべり止めやデザイン性を加えたい場合、ローレット加工は有効な手段です。
加工を依頼する際は、製品の用途、材質、形状、予算などを考慮し、切削式・転造式のどちらが適しているか検討しましょう。
この記事が、ローレット加工の知識を深め、適切な加工方法を選択する際のお役に立てれば幸いです。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
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