スチールと鉄の違いを徹底解説!炭素含有量と用途別の素材の選び方

「スチールと鉄の違いって?同じ金属じゃないの?」

「炭素量で何が変わるの?」

炭素をわずかに加えるだけで強度・靭性(粘り)・耐食性が大きく変わり、選び方を誤るとコストも寿命も損してしまいます。

本記事でわかること

  • 炭素含有量の違いによる純鉄・鋼・鋳鉄の説明
  • JIS規格に沿って各材質を正式名称で確認
  • 建築材・鍋・フライパンなど用途別の最適素材を比較
  • ステンレスやアルミなど他金属とのメリット・デメリット
  • 初心者でも迷わない5つのチェックポイント

素材選びの「なぜ?」を解決します。

記事を読み終える頃には、住宅の梁にSS400を使う理由や、カーボンスチール鍋が軽くて強い秘密まで説明できるようになりますよ!

自宅のキッチンからDIY、さらに建築現場まで応用できる知識を獲得し、失敗しない金属選定を実現しましょう。

ぜひ、最後まで読んでみてください。

この記事の監修者

藤原 弘一

1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。

保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

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スチールと鉄は何が違う?

スチールと鉄は何が違う?
区分炭素量主な用途
純鉄0.02%未満電磁鋼板、実験用材料
鋼(スチール)0.02〜2.14%建築、車体、機械部品
鋳鉄2.14%以上エンジンブロック、マンホール蓋

スチールと鉄の差は、鉄の中に入る炭素の量で決まります。

炭素は鉛筆の芯と同じ成分で、少し混ざると鉄は大幅にかたく、しかも折れにくくなるのです。

かたくて粘り強いスチールはビルの骨組みや自転車のフレーム向き。

反対に炭素がほとんどない純鉄はやわらかく、磁石や細かい部品にぴったりです。

海の近くや水回りでは、サビに強いステンレス鋼が長もちします。

鉄とスチールは炭素含有量で性能が変わる

炭素が0.02%を超えると鉄はスチールに変わります。

炭素が鉄のすき間に入り、金属どうしを固くつないで強さが増すのです。

純鉄の場合は炭素が少ないため手で曲げられるほどやわらかいですが、炭素が約0.17%入るSS400は引っぱる強さが400~510 N/mm²もあり、家の梁に使用されます。

なお、「炭素が多いほど良い」と思われがちですが、鋳鉄は強くても割れやすく、橋には向きません。

硬度と靭性の差が鉄・スチールの用途を決める

硬度と靭性の差が鉄・スチールの用途を決める

硬い材料はすり減りに強い一方で、強い衝撃で欠けやすいです。

例を挙げると、SS400は硬さがほどほどで粘りがあり、地震で曲がっても折れにくいためビルの骨組みに選ばれます。

逆に中炭素鋼S45Cを熱処理すると表面硬さがHRC25になり、ギアやシャフトの摩耗を防ぎますが、急な衝撃には注意が要ります。

「硬いほど長持ち」という声もありますが、工具摩耗や加工コストが上がるため、場所によって使い分けるのが良いでしょう。

硬さと粘りの両方を見て選ぶと失敗しません。

耐食性を重視するならステンレス鋼も選択肢

サビを気にする場所ではステンレスが安心です。

鉄に約10.5%以上のクロムを入れると、表面によろいのような膜ができるため、傷がついても空気ですぐ再生します(合金ステンレス鋼)。

具体例を挙げるなら、国土交通省が1984~2003年にかけておよそ100枚の試験片で行った長期実測があります。

海のそばに金属の板を置き、どれだけ錆びて薄くなるかを20年間にわたって調査したのです。

  • ステンレス(SUS304 と SUS316L)の板は波しぶきがかかる場所や海の中でも20年で0.1ミリ以下しか減りませんでした。
  • 何も守っていない普通の鉄は1年で約0.7ミリずつ薄くなり、2年でカード1枚分ほど減りました。

数字を比べると、ステンレスは海辺でもほとんど錆びず、長いあいだ形を保てるとわかります。

鉄とスチール(鋼)の定義とJIS規格

鉄とスチール(鋼)の定義とJIS規格

鉄とスチールのちがいを一言で表すと、炭素がどれだけ入るかです。

炭素がほとんど入らない「純鉄」はやわらかく、磁石の芯などに向きます。

少し入ると「鋼(スチール)」になり、かたさと粘りが伸びて建物や機械に。

日本ではJISという決まりごとがあり、炭素の量でものの名前を正式に分けています。

下の表とグラフで、代表的な3つの材料をくらべてみましょう。

材料炭素の割合 (%)引っぱり強さ (N/mm²)おもな使い道
純鉄(SUY)0.02未満約200磁石の芯・電気部品 (J-STAGE)
SS400約0.17400–510 (Nippon Steel)建物の柱・梁
S45C0.42–0.48約600 (熱処理後) (J-STAGE)ギア・シャフト

上の表は3つの材料の炭素量を比べたものです。

炭素が増えるほど棒が高くなり、材料はかたくなります。

鉄とは?|純鉄の性質と主な用途

電気や磁気性能を優先するなら、炭素をほとんど含まない純鉄が最適です。

炭素量がわずか0.02%未満に抑えられているため、原子の並びに余裕が生まれて電子が動きやすくなります。

結果として導電性が高く、磁束もスムーズに通過するためです。

トランスコアに純鉄(SUY)を採用した実験では、電力損失が約3割低減したという報告があります

(出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/isijinternational/57/10/57_ISIJINT-2017-145/_pdf)。

「強度よりも電気効率」という場面では、迷わず純鉄を選びましょう。

スチール(鋼)とは?|炭素鋼・合金鋼の基礎

スチール(鋼)とは?|炭素鋼・合金鋼の基礎

炭素を0.02〜2.14%まで添加すると、鉄はスチールへと姿を変え、硬さと粘りを兼ねた素材に成長します。

「曲げに耐えるが割れにくい」という矛盾しがちな特性を同時に持つのがスチールの特徴。

建築や機械で定番の普通鋼は、炭素量がちょうど良いためコストと性能のバランスが抜群です。

適切な炭素量を選べば「壊れにくく加工しやすい」万能素材になります。

JIS規格で分かる鉄と鋼の区分

JISは炭素量と機械的性質を数値で示し、材料のバラつきを防ぐ安全ネットとしての役割を果たします。

同じ呼び名でも硬さが異なれば強度不足を招き、事故につながる可能性があるためです。

機械構造用鋼S45C は JIS G 4051により「炭素 0.42〜0.48 %」と定義されています。

なお、JISはISOと対応表があり、S45Cは国際呼称C45に当たります。

用途別に比較:鉄かスチールか、最適素材の選び方

「硬さ・粘り・サビにくさ」の微妙な差が、安全性や道具の使い勝手を左右します。

この項目では、目的別の優劣を見ていきましょう。

建築・構造材の選定ポイント|強度・コスト・靭性

家や橋にはSS400(炭素約0.17%)のような普通鋼が定番です。

JIS G3101で「引っぱり強さ400–510 N/mm²」と決められ、厚さ40 mmまでなら全国どこでも入手しやすいからです。

  • 3階建て木造を鉄骨で補強する場合、梁にSS400を使うと曲がりながら地震エネルギーを逃がします。
  • 工作機械のシャフトにはS45C(炭素約0.45 %)を焼入れして使うと摩耗が減り、修理は年1回で済んだ実例も(出典元:https://www.jfe-steel.co.jp/products/usuita/catalog/b1j-005.pdf?utm_source=chatgpt.com)。

大きく曲げたい構造にはSS材、表面が減る部品には中炭素鋼という分け方が、コストと安全を両立します。

調理器具の素材比較|スチール鍋・鉄鍋・ステンレス鍋

ニーズ最適素材理由
熱容量重視鉄鍋あたたまるまで時間がかかるが、いったん熱をためると温度が下がりにくい特性あり
軽快に振りたいカーボンスチール鉄より板厚を薄くできるため、同径でも約2割軽量。振りやすい。
お手入れ優先ステンレスサビにくい膜を自動で作るため、水気の多いキッチンでも安心。

熱まわりを重視するなら鉄、軽さならカーボンスチール、手入れを楽にしたいならステンレスが便利です。

スチール鍋と鉄鍋の特徴&メンテナンス

  • スチール鍋:初回シーズニングで油を染み込ませ、焦げ付き防止皮膜を作ります。
  • 鉄鍋:洗剤を使わずに湯洗いし、薄く油を塗ると黒皮膜が育ってこびりつきにくくなります。

共通する注意事項としては、空焚き後の放置は変形の原因になるという点です。

火を止めたら料理をすぐお皿に移すようにしましょう。

フライパンはどっち?|カーボンスチールと鉄の長所

腕に負担をかけず振りたい料理はカーボンスチール、強い焼き色を付けたい料理は鉄が向きます。

カーボンスチールは同じ直径で鉄より軽いため、傾けたとき手首が疲れません。

「焼く」なら鉄、「振る」ならカーボンスチールというシンプルな基準で十分です。

スチールウールと鉄ウールの使い分け|サビやすさの違い

湿った場所で長く置くならステンレス系スチールウールが安心。

クロムを13%ほど含むため、表面にサビを防ぐ膜ができ、茶色い粉が出にくいです。

また、浴室の水アカ落としにステンレスウールを使うと、1週間後も手が茶色く汚れません。

「濡れたままにしそう」と感じたら、迷わずステンレスウールを選びましょう。

鉄・スチール以外の金属とも比較

アルミニウムとステンレスも選択肢に入れると、軽さ・熱の伝わり方・サビ対策・費用面でどれが最もベストかを検討できます。

鉄系だけを比べると「軽くしたい・手入れを楽にしたい」といったニーズに応えきれない場面があるためです。

下記に、鉄やスチール以外の金属が持つ長所と弱点をご紹介します。

スチール・鉄とアルミの違い|軽さと熱伝導性

軽くて火が通りやすい道具が欲しいならアルミが最適。

アルミの重さ(比重)は2.70g/cm³で、鉄のおよそ3分の1しかありません。

さらに熱を伝える速さ(熱伝導率)は235 W/m·Kと、炭素鋼の約5倍。

「軽く持ちたい」「すぐ温めたい」場面ではアルミ、丈夫さ優先なら鉄と選ぶのが良いでしょう。

鉄・スチールで失敗しない素材選び 5つのチェックポイント

鉄・スチールで失敗しない素材選び 5つのチェックポイント

①硬度・靭性・耐食性のバランス

まずは「かたさ・ねばり・サビにくさ」を同時に見比べると、失敗が減ります。

家を支える柱と、海辺の手すりでは求める強さが違いますよね。

SS400 は引っぱり強さが400~510N/mm²あり、曲げても折れにくいので梁や橋に多く使われます 。

ギアには熱処理で表面を硬くできるS45Cが向いており、摩耗を防ぎます 。

一方、潮風が当たる場所では SUS304が20年で0.1mmしか減らない試験結果(「耐食性を重視するならステンレス鋼も選択肢」の項目参照)があり、サビ対策に優れていると言えるでしょう 。

②加工性とコストの見極め

同じ形を作っても材料で加工費は変わります。町工場の比較では、S45C の旋盤加工は SS400 よりおよそ2割高いと報告されています

(出典元:https://swd-metalprocessing.com/faq/1582/?utm_source=chatgpt.com)。

硬い素材は刃物が早く痛み、機械の時間もかかるからです。

ただ、S45Cは削ったあとに熱処理する方法を選べばコストを減らせます。

③重量と熱伝導性をチェック

道具の軽さと温まりやすさは、数字で簡単に判断できます。

  • アルミの比重は2.70g/cm³ で鉄の約3分の1、熱伝導率は235W/m·Kと高く、湯が早く沸きます。
  • 炭素鋼は比重 7.85 g/cm³、熱伝導率 45 W/m·K と中間的で万能選手。
  • ステンレスは重くて熱が伝わりにくいものの、保温性が高く煮込み料理に向きます。

④JIS規格・安全基準への適合確認

材料名の後ろにJIS G3101 SS400やJIS G4051 S45Cと番号が付いているかを必ず確認しましょう。

JISは成分と強さを細かく定めた日本のルールで、図面に記すだけで性能のばらつきを避けられます。

建築確認でも「JIS表示あり」は説明が早く済み、工期短縮に役立つでしょう。

⑤メンテナンス方法で寿命を伸ばす

買った後の手入れも重要です。

長く使う場面ほど、手入れの簡単さを計算に入れて選ぶとお財布にも優しいです。

まとめ【スチールと鉄の違いを理解して最適な素材を選ぼう】

最後に、記事のポイントを簡単に整理します。

  • 鉄とスチールの差は炭素量で決まり、かたさ・ねばり・サビへの強さが変わります。
  • JIS 規格を見ると純鉄・鋼・鋳鉄の区分がわかり、性能のばらつきを防げます。
  • 用途別比較では、梁には SS400、ギアには S45C、海辺の手すりには SUS304 が適材でした。
  • ほかの金属との比較で、軽さと熱伝導に優れるアルミ、メンテが楽なステンレスの長所も確認しました。
  • 5つのチェックリスト(性能・加工費・重さと熱・JIS 表示・手入れ)を使えば、家庭でも仕事でも素材選びで失敗しにくくなります。

買う前に「どこで、どう使うか」を考えて上の5項目を順に見直し、道具も建材も長く使いましょう。

株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。

時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。

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