アルミニウムの主な欠点5つ|欠点をカバーする方法も紹介
「アルミニウム製品を使いたいけど、どんな点に注意すれば良いのかな?」
「アルミニウムの弱点と、それを補う方法が知りたい」
このような疑問を持つ方に向けて、アルミニウムの特性を解説します。
この記事を読むと以下の内容がわかります。
- アルミニウムが持つ主な5つの欠点
- アルミニウムの欠点をカバーする具体的な方法
- アルミニウムの使用を避けるべき主な場面
アルミニウムは軽量で加工しやすい便利な金属ですが、鉄やステンレスなどの他の金属と比較すると、強度や耐摩耗性、耐熱性などで劣る面があります。これらの特性を理解せずに使用すると、製品の変形や早期の劣化につながることがあります。
アルミニウムの特性を全て把握して使いこなすのは、なかなか難しいですよね?
アルミニウムについて理解を深め、より安全で効果的に活用するために、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の監修者

藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

アルミニウムの主な欠点5つ

アルミニウムの主な欠点は以下のとおりです。
- 強度が低く、変形しやすい
- 耐摩耗性が低い
- 溶接が難しい
- 熱に弱く変形することがある
- 腐食に弱い場合がある(表面処理されていないと)
順番に解説します。
強度が低く、変形しやすい
アルミニウムは軽量で扱いやすい反面、鉄やステンレスと比べて強度が低く、衝撃や圧力に対して変形しやすいという欠点があります。
重い荷重がかかる部分に使うと、凹んだり曲がったりすることがあります。
日常生活ではスーツケースやアルミ缶などに使われていますが、これらも強い力が加わるとすぐにへこむのがその証拠です。
耐摩耗性が低い
アルミニウムは表面が柔らかく、摩耗に弱い性質があります。
頻繁に摩擦が発生する環境では表面が削れてしまうため、長期間の使用には向きません。
工場の部品や機械など、耐久性が求められる用途で使う際は注意が必要です。
対策として、表面にコーティングを施すなどの加工が必要になります。
溶接が難しい
アルミニウムは熱伝導性が高く、溶接時に熱が広がりやすいため、溶接が難しいとされています。
鉄やステンレスに比べて専門的な技術や専用の溶接機材が必要で、DIYや簡易な補修作業では扱いにくいのが現状です。
建築や自動車修理の現場でも、アルミを扱うにはスキルが問われるため、初心者にはハードルが高い素材です。
熱に弱く変形することがある
アルミニウムは融点が約660℃と比較的低く、熱に弱いという特徴があります。
火に直接かける調理器具や高温になる電子部品のケースなどに使用すると、熱によって変形するリスクがあります。
また、高温環境で強度が低下するため、過酷な条件下では不向きとされます。使用環境をしっかり見極めることが重要です。
腐食に弱い場合がある(表面処理されていないと)
アルミニウムは酸素と反応して保護皮膜(酸化皮膜)を作るため、一見サビに強いように見えますが、塩分や酸に長時間さらされると腐食が進行します。
とくに海沿いや湿度の高い環境では、表面処理されていないアルミは白サビなどが発生しやすくなります。
耐久性を保つには、アルマイト処理や塗装などの表面加工が欠かせません。

アルミニウムの欠点をカバーする方法

アルミニウムには弱点がありますが、加工や素材選びを工夫すれば多くの欠点を補うことが可能です。代表的な対策を紹介します。
陽極酸化処理(アルマイト)による耐食性向上
アルミニウムの腐食を防ぐ方法として有効なのが「陽極酸化処理(アルマイト)」です。
これは表面に人工的な酸化皮膜を形成する処理で、耐食性や耐摩耗性を大幅に高めることができます。
見た目も美しくなるため、家電製品や建材などでも多用されています。
塩害地域や屋外使用など過酷な環境での使用には、アルマイト処理された製品を選ぶことで、長期的な劣化リスクを軽減できます。
合金化による強度アップ(例:ジュラルミン)
強度や耐摩耗性を補いたい場合は、他の金属と組み合わせて「合金化」する方法があります。
代表例が「ジュラルミン」で、これはアルミに銅やマグネシウムなどを加えた高強度合金です。
飛行機や自転車のフレーム、精密機器などにも使用されており、純アルミではカバーしきれない強度や硬さを実現します。
用途に応じて適切な合金を選ぶことが、性能を最大限に引き出す鍵となります。
使用シーンに応じた適材適所の選択
アルミニウムの欠点は、使用シーンを誤ることで顕著に現れます。
逆にいえば、素材の特性を理解し、適した用途に使えば欠点は問題になりません。
例えば軽量化が求められる部分にはアルミが最適ですが、高強度が必要な箇所は鉄やステンレスを選ぶと良いでしょう。
「軽さ・加工性を重視したいのか」「強度・耐久性を重視したいのか」に応じて素材を使い分けることが、最も合理的な対策と言えます。
関連記事:【9割が知らない】アルミニウムのさまざまな加工方法|歴史や特徴も紹介
アルミニウムの使用が向いていないシーン

アルミニウムは軽くて便利な素材ですが、使用する場面によっては性能が不足することもあります。特に以下のような状況では注意が必要です。
重荷重をかける構造物(橋梁・建築)
アルミニウムは軽量で加工しやすい反面、鉄や鋼材に比べて強度が劣ります。
そのため、橋梁や高層ビルなど大量の荷重がかかる構造物には不向きとされています。
わずかな力で変形する可能性があるため、安全性が求められる建築用途では、通常は鉄骨やコンクリートが選ばれます。アルミを使う際は、強度を補う合金化や補強設計が必要不可欠です。
摩耗が激しい機械部品
機械の可動部分や摺動部など、摩擦が頻繁に起こる場所ではアルミニウムは適していません。
表面が柔らかく削れやすいため、長時間使用すると劣化が早まり、部品交換やメンテナンスの頻度が増す恐れがあります。
特に高精度が求められる精密機械では、ステンレスや炭素鋼のような高硬度素材の方が信頼性が高く、結果的にコスト削減にもつながります。
高温環境での長時間使用
アルミニウムは融点が約660℃と比較的低く、高温環境に弱い素材です。
長時間の加熱によって強度が低下したり、熱変形を起こすリスクがあります。例えば、エンジン内部や産業用加熱装置などの過酷な温度条件では、アルミ部品の使用は避けるべきです。高温に強いステンレスや耐熱合金の使用が推奨されます。
関連記事:【9割が知らない】アルミニウムの特徴10選|使用する際の注意点も解説
アルミニウムのよくある質問(FAQ)

アルミニウムに関して、よく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。製品選びや使用時の注意点を理解するのに役立ててください。
Q. アルミニウム製品はサビますか?
アルミニウムは鉄のように赤サビは発生しませんが、白サビ(酸化アルミニウム)と呼ばれる現象が起きることがあります。
これは空気中の酸素や水分と反応して自然に発生するもので、基本的には表面を保護する働きがあります。
ただし、塩分や酸に長時間さらされると腐食が進行するため、屋外や海沿いで使用する際は、アルマイト処理などの表面加工された製品を選ぶと安心です。
Q. アルミは電子レンジで使えますか?
基本的にアルミ製品は電子レンジで使用できません。
金属はマイクロ波を反射する性質があるため、火花が出たり、最悪の場合は電子レンジが故障するおそれもあります。
特に皿や鍋など大きな面積の金属製品は非常に危険です。ただし、メーカーによっては電子レンジ対応の特殊加工アルミ容器もありますので、製品の説明をよく確認してください。
Q. 食品に使っても安全?
アルミニウムは食品に使用しても基本的には安全とされています。
アルミホイルやアルミ鍋など、家庭でも広く使われており、人体への影響は極めて少ないです。
ただし、酸性の食品(酢・レモン・トマトなど)を長時間接触させると、アルミが溶け出すことがあるため注意が必要です。安全性を高めるためには、内側にコーティングが施された製品を選ぶと安心です。
Q. アルミ鍋が黒くなるのはなぜ?
アルミ鍋が黒ずむ主な原因は、空気中の酸素や水分と反応して生成される「酸化アルミニウム」や、水道水に含まれる成分(カルシウムやマグネシウム)による化学反応です。
これは人体に無害であり、アルミの劣化を示すものではありません。黒ずみが気になる場合は、クエン酸を使って煮沸洗浄すると元の状態に戻すことができます。
まとめ
この記事で解説したアルミニウムの特性について、改めて重要なポイントをまとめます。
- アルミニウムは軽量で加工性に優れますが、強度、耐摩耗性、耐熱性においては他の金属に劣る場合があります。
- 主な欠点として、強度の低さ、耐摩耗性の低さ、溶接の難しさ、熱による変形、特定の条件下での腐食が挙げられます。
- これらの欠点は、陽極酸化処理(アルマイト)による耐食性向上や、他の金属との合金化による強度アップ、使用シーンに応じた適切な素材選択でカバーできます。
- 重い荷重がかかる構造物、摩耗が激しい機械部品、高温環境での長時間の使用は避けるべきです。
アルミニウム製品を選ぶ際や使用する際には、これらの特性をよく理解し、用途に適した使い方を心掛けましょう。
今回の内容が、皆さまのアルミニウムに対する理解を深め、より安全で効果的に活用するための一助となれば幸いです。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
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