【保存版】チタンの加工方法4選|加工が難しいとされる理由も解説
チタンの加工に関する悩みや疑問、あなたも抱えていませんか?
この頑丈で軽量な素材を最大限に活用する方法を探している方へ、当記事が明確な答えを提供します。
ここでは、専門家がチタン加工のテクニックを詳細に解説し、どのようにして各種の課題を克服し、製品の品質を飛躍的に向上させたかの事例を紹介します。
さらに、チタンの特性を理解し、加工技術を駆使することで、耐久性が増し、コスト削減にもつながるため、産業用途に限らず、多くのプロジェクトにおいてその価値を発揮できることを実感していただけるでしょう。
この記事を読むことで、チタン加工の可能性を再発見し、次なるイノベーションへの一歩を踏み出すきっかけになるはずです。
この記事の監修者
藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士
目次
チタンの加工方法
チタンの主な加工方法は以下の4つです。
- 切断加工
- 曲げ加工
- 溶接加工
- 切削加工
切断加工
チタンの切断加工は主に以下の3つです。
- レーザー加工
- シャーリング加工
- ワイヤーカット加工
レーザー加工
レーザー加工とは、レーザーの光を集めて照射し、その熱によって光が集まった部分を溶かして切断する方法です。
加熱範囲が小さいため、変形を抑え、バリなどの不良が少なく、形状対応が広めなのが特徴です。
シャーリング加工
シャーリング加工は刃切断ですが、切断速度が速く大量加工に向いています。
ワイヤーカット加工
ワイヤーカット加工は、材料と電極との間に電圧をかけ、放電を起こすことで、熱を使って材料を溶かしながら加工する方法です。
この加工法は高精度で大量加工にも向いています。
曲げ加工
チタンを曲げる加工には、「プレス加工」や「密着曲げ」、「ベンダー曲げ」などがあります。
チタンは弾性が強く、スプリングバックを起こす場合があります。
そのため曲げ加工を行う際には圧力や角度などの材料の習性と寸法や厚みなどに合わせ、細かく調整する必要があります。
「スプリングバック」とは、曲げ加工で加工後、荷重を除き製品を型から取り出すと弾性的な回復が起こって形状が戻り、その形状が所望の形状と一致しなくなる現象のことです。
チタンの場合は難易度が高いとされています。
溶接加工
チタン加工の中でも、もっとも難しいとされているのが「溶接加工」です。
理由としては、チタンの溶接部分は大気に触れると反応し、脆化現象が起きやすくなるからです。
脆化現象(ぜいかげんしょう)とは、金属やプラスチックなどが展延性や靱性を失い、もろく、壊れやすくなる現象のことです。
一般的な溶接加工では「TIG溶接」があります。
溶接中のチタンをシールドガスに包ませることで空気に触れることが無くなり、脆化や酸化を防げます。
その他の溶接加工として以下の方法があります。
- MIG溶接
- 電子ビーム溶接
- プラズマ溶接
- レーザー溶接
チタンと他の金属の溶接は、硬くてもろい「金属間化合物」が生成されるため、基本的に直接溶接は不可能です。
切削加工
チタンを切削加工する方法は以下のとおりです。
- マシニングセンタ
- フライス盤
- ドリル加工
チタンの切削では工具の寿命が他の金属加工に比べて短いといわれています。
マシニングセンタは自動で工具を交換して加工します。
フライス盤は回転する刃物に工程した素材を削って加工、複雑な加工が可能で、小ロットや多品種の生産に向いています。
ドリル加工では、加工した穴にドリル自体が入っていくため、切削熱が蓄積し屑が溝部に密着することがあるためステップフィードまたは、オイルホール付きドリルを使用します。
チタンの特徴
チタンの特徴は以下のとおりです。
- 軽量
- 強度がある
- 耐熱性が高い
- 耐食性が高い
- 安全性が高い
軽量
チタンは、金属全体の中でも軽い金属です。
比重で比べても、チタンの質量は鉄の3/2、銅の1/2程度です。
軽量な金属として有名なアルミニウムより比重は高いですが、強度や耐食性はアルミニウムより優れています。
軽さを活かして、チタンはメガネやスポーツ用品、アクセサリーなどに使われます。
強度がある
チタンは強度があるのが特徴です。
他の金属と比べると、鉄の約2倍、アルミニウムの約3倍です。
強度があるのにしなりやすく、少しの変形なら元の形状に戻る特性も備えています。
アルミニウムよりも強度が高く、製造物を薄くできるため、チタンを使用した方が軽量化できる場合もあります。
チタンは軽量かつ強度に優れるという特性から、航空機部品にも使用されています。
耐熱性が高い
チタンは耐熱性が高い特徴があります。
チタンの溶融温度は約1,660℃です。
他の金属の溶融温度は以下のとおりです。
- アルミ:約660℃
- 銅:約1,080℃
- 鉄:約1,530℃
上記の金属と比べてもチタンは溶融温度が高いことがわかります。
耐熱性を活かして、高温になるロケット部品の材料にも使用されています。
耐食性が高い
チタンの特徴の一つとして耐食性が高いという点があります。
「耐食性」とは、腐食しにくい性質、ある環境下で腐食作用に耐える性質のことをいいます。
海水中でも耐食性は、錆びにくい金属として有名な「プラチナ」にも並ぶほど優れています。
プラチナよりもチタンの方が安価なため、船や海洋建造物の素材にも使用されています。
安全性が高い
安全性が高いのはチタンの大きな特徴です。
チタンは安定した物質で、イオン化しにくいという特性があります。
イオンが溶出する危険性が少ないため、金属アレルギーが起こりにくく、毒性もないため安全です。
生体親和性の高さから、アクセサリーや人体に埋め込む固定器具、医療用道具などに使用されています。
関連記事:チタン合金の種類とは|それぞれの特徴について詳しく解説
ドリル加工では、加工した穴にドリル自体が入っていくため、切削熱が蓄積し屑が溝部に密着することがあるためステップフィードまたは、オイルホール付きドリルを使用します。
意匠性を高めるチタン加工
意匠性を高めるチタン加工として、以下の2つがあります。
- 意匠加工
- 研磨加工
意匠加工
チタンの意匠加工は主に以下の3つがあります。
- 大気酸化法
- 陽極酸化法
- 化学酸化法
大気酸化法
大気酸化法はチタンを大気中で加熱し表面に形成した酸化皮膜の反射光と内部反射光との干渉作用により発色します。
欠点としては、バリエーションが少ないことで、陽極酸化法のほうが実用されています。
陽極酸化法
陽極酸化法とは、リン酸などの水溶液中でチタンを陽極にし、電流を流すことでチタン材の表面に酸化皮膜を形成する処理により、膜圧に応じた干渉色が生じます。
化学酸化法
化学酸化法とは、強力な酸化剤を利用して原位置で汚染物質を無害な物質(H2OやCO2)に分解する方法のことです。
研磨加工
チタンの研磨加工は主に以下の3つがあります。
- ブラスト
- ヘアライン
- 鏡面仕上げ
ブラスト
ブラストはアルミやガラス球、鉄球などの研磨剤を吹き付けて表面を荒らし、梨地状に仕上げつやけしをするなどして意匠性を向上させます。
屋根材に使用されるアルミナブラストといわれる仕上げが代表的なものです。
ヘアライン
ヘアラインは研磨ベルトや砥石によって研磨目ラインをつけた仕上げです。
鏡面仕上げ
バフ研磨や化学研磨、電解研磨などの方法があり、表面を研磨し光沢を出します。
チタン加工のメリット
チタン加工のメリットは以下のとおりです。
- 軽量化できる
- 腐食に強い
- 人体に触れる場面にも使用可能
軽量化できる
チタンの特長はその軽さです。
ステンレスの約2/3の重量しかありません。
この軽さは加工や運搬の際の手間やコストを大幅に削減します。
金属を用いた装置や機器は、サイズが大きくなると、その分だけ重くなります。
特に2階以上の建物に大型の装置を設置する際は、その重量が問題となることがあります。
しかし、チタンを使うことで部品を軽量にでき、設置や運搬が容易になるのが嬉しい点です。
腐食に強い
チタンの大きな特長の一つはその高い耐腐食性です。
一般的に金属は空気に触れると酸化しやすいですが、チタンは空気中の酸素との反応で表面に酸化チタンの薄い層を形成します。
この酸化チタンの層が非常に強固で、これによってさらなる酸化や腐食が防がれます。
特に、海水のような厳しい環境下でも、ステンレスよりも優れた耐腐食性があるのが特性です。
人体に触れる場面にも使用可能
チタンは人体に優しいという特徴があります。
毒性を持たず、アレルギーを引き起こすリスクも低いため、人の体に直接触れる製品にも適しています。
さらに、チタンが酸素と反応して作り出す酸化チタン層は抗菌効果を持ち、食器などの用途でも非常に適しています。
チタン加工のデメリット
チタン加工のデメリットは以下のとおりです。
- 切削加工での注意点
- 切断加工での注意点
- 溶接加工での注意点
順番に解説します。
切削加工での注意点
チタンの加工においては、マシニングセンターや汎用フライス盤などが主に使用されます。
しかし、切削や切断作業では発生する熱に特に注意が必要です。
この熱は、素材自体と使用する工具に影響を及ぼし、切削速度が高まるにつれて熱も増加します。
そのため、状況によっては切り屑が発火するリスクも考慮する必要があります。
切断加工での注意点
チタンを切断する方法として、レーザー加工がしばしば採用されます。
この強固な金属は、レーザーの高熱により溶解させる必要があります。
一方で、ワイヤーカット加工を用いてもチタンを切断することは可能ですが、熱伝導率が低いために工具の熱が溜まりやすく、これが機械の耐用年数に悪影響を及ぼすことがあります。
そのため、非接触式の切断装置を使用することが望ましいです。
溶接加工での注意点
チタンの加工で特に注意が必要なのは、溶接プロセスです。
チタンは活性が高く、水や酸素との反応が促進されるため、低温での溶接でも酸素、窒素、水素と反応しやすく、これが溶接部の脆化を招く可能性があります。
このような脆化を避けるためには、溶接中にシールドガスを用いて大気から隔離することが非常に重要です。
脆くなったチタンは性能を発揮できないため、溶接後も200℃以下の温度で大気との隔離を保つ必要があります。
チタンの溶接には通常、TIG溶接が用いられ、材料の厚みに応じてMIG溶接や電子ビーム溶接が選択されることもあります。
チタンの加工が難しいとされる理由
チタンの加工が難しいとされる理由は以下のとおりです。
- 熱伝導が低い
- 全属活性が高い
- ヤング率が小さい
- 変形抵抗が大きい
順番に解説します。
熱伝導が低い
チタンの熱伝導率が低いため、切削加工時には熱が逃げにくく、結果として工具と加工材料に熱が溜まります。
これが原因で、工具とチタンの間の摩擦が増大してしまうのです。
全属活性が高い
チタンは化学的に非常に活性が高く、他の金属との結合しやすい特性を持っています。
このため、チタンと工具の間で発生する加工熱は、合金形成や融着を引き起こす可能性があります。
ヤング率が小さい
チタンはヤング率が低いため、切削加工時に加工対象が容易に変形する傾向があります。
特に薄いチタンを加工する際には、振動(ビビリ)が発生しやすく、その結果、加工精度が落ちることがあるため、非常に慎重な操作が求められます。
変形抵抗が大きい
チタンは変形抵抗が高いため、加工する際に熱が容易に発生します。
この加工中に生じる熱が融着を引き起こし、硬くて脆いチタン化合物が形成されることがあります。
自社のチタン加工の事例紹介
チタン①(TB340)
これはNC旋盤~5軸マシニングセンターで加工しました。
当社展示用オリジナルのために作成しました。
旋削~ミーリング加工の手順で加工しました。
国土地理院の正確な等高線データーをもとに、3D図面を作成、のちCAMを使用して作られたNCプログラムにて工作機械を動かし製品にしました。
3D図面の作成、CAMを使ってのプログラムの作成をしました。
チタン②(TP340)
これは特殊な熱処理で仕上げました。
本来のチタン板の曲げ加工は、クラックが生じ4mm以上だと不可能ですが、大学との連携により、特殊熱処理することでクラックが発生しておりません。
加工手順としては、素材~熱処理~プレス曲げ加工です。
チタン2(TP340)を加工する際のポイントは熱処理の温度管理、温度調整でした。
まとめ【知識をつけてチタン加工を依頼しましょう】
今回は、チタンの加工方法と併せて、チタンの特徴やチタン加工のメリットを解説しました。
チタンの主な加工方法は以下の4つです。
- 切断加工
- 曲げ加工
- 溶接加工
- 切削加工
それぞれの特徴を理解してから依頼することが大切です。
本記事を参考にぜひチタン加工を検討してみてください。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
他社には負けない、業界トップクラスの技術があります。
お問い合わせは無料なので気軽にご連絡ください。