意外と知らない!ステンレスの種類別秘密|主に4種類

ステンレスの種類を知ることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

本記事では、日常生活やビジネスの場でよく遭遇する「どのステンレスを選べば良いか」という疑問に答えます。

例えば、耐食性や強度が求められる場面で最適なステンレス種類を選べば、長期にわたるコスト削減や信頼性の向上が見込めます。

この記事を通じて、あなたも「ステンレス種類」の知識を深め、賢い選択ができるようになります。

この記事の監修者

藤原 弘一

1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。

保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

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ステンレスとは

ステンレスとは

ステンレススチールは、「汚れない鉄」という意味を持つ英語「Stainless Steel」から名づけられた金属で、容易に錆びることなく、従来の鉄の代替として開発されました。

この素材は耐食性と強度を高めるために、鉄(Fe)を主要成分とし、クロム(Cr)やニッケル(Ni)などの他の金属を加えて製造される合金です。

ステンレスの使用歴は、数千年に及ぶ鉄に比べてまだ浅く、およそ100年程度の歴史しかありません。

また、金属業界ではJIS規格などで「SUS(Steel Use Stainless special)」という表記が用いられることが一般的です。

この表記はステンレス鋼の特殊な用途を示しています。

ステンレスの種類

ステンレスの種類

ステンレスの種類は以下のとおりです。

  • オーステナイト系
  • オーステナイト・フェライト系(二相系)
  • フェライト系
  • マルテンサイト系

順番に解説します。

オーステナイト系

SUS304、18クロム-8ニッケル合金が一般的な例です。

このオーステナイト系ステンレスは通常、優れた延性と靭性を持ち、冷間加工時の深絞りや曲げ作業に適しています。

また、溶接性が高く、耐食性にも優れているため、低温から高温までの環境でも安定した性能を発揮します。

これらの特長から、SUS304は非常に幅広い用途に利用されており、家庭用品、建築材料、自動車部品、化学工業、食品加工業、合成繊維製造、原子力発電、LNGプラントなど、様々な分野での需要があります。

また、製品形態は薄板が主流で、その他にも厚板、棒材、管材、線材、鋳物などが製造され、全ステンレス生産量の60%以上を占めています。

析出硬化型ステンレスは、析出硬化処理という熱処理を施すことで、非常に高い硬度を実現する材料です。

オーステナイト・フェライト系(二相系)

このステンレスは、オーステナイトとフェライトの二つの異なる金属組織(二相)を持ち合わせています。

その物理的特性は、フェライトとオーステナイトの特性を平均したような性質を示します。

特に、耐海水性や応力腐食割れへの耐性が高く、さらに強度も非常に高いという特徴があります。

これにより、海水を使用する復水器や熱交換器、排煙脱硫装置などの公害防止設備や、様々な化学プラントの装置に適しています。

主に製造される形状は、厚板、管、鋳物などがあります。

フェライト系

SUS 430という18クロム系のステンレスが、このグループの代表的な例です。

このステンレスは、熱処理で硬化することが少なく、通常は焼なまし状態(軟化された状態)で使用されます。

マルテンサイト系のステンレスに比べて成形加工性と耐食性に優れており、溶接性も比較的良好です。

これにより、一般的な耐食用途で広く利用されています。

使用例としては、厨房用品、建築内装、自動車部品、ガス・電気器具の部品などがあり、主に薄板や線材の形状で使われています。

また、製錬技術の向上により、低炭素化が容易になった結果、SUS430LX、SUS430J1L、SUS443J1といった、耐食性や成形加工性に優れた鋼種が増えています。

特に、SUS444やSUS447J1、SUSXM27などの極低炭素・窒素を加えた高純度フェライトステンレスは、耐食性がさらに向上しており、塩化物による応力腐食割れの発生が少ないため、温水機器や化学プラントなどの用途での需要が拡大しています。

マルテンサイト系

主に知られているのは、SUS403とSUS410の13クロム系ステンレスです。

このグループのステンレスは焼入れによって硬化が可能であり、成分選びと熱処理の条件によって、さまざまな特性を引き出すことができます。

通常、棒鋼や平鋼という形状で用いられ、機械構造用部品に適しています。

これには、高い強度と耐食性、耐熱性が求められるタービンブレード、ポンプ、シャフト、ノズルなどが含まれます。

耐食性に関しては、炭素の含有量が少ないほど望ましいとされていますが、逆に炭素が多いものは耐磨耗性に優れています。

例えば、SUS420(13クロム高炭素)は刃物や外科用器具に、そして最も硬さが高いSUS440(18クロム高炭素)は軸受やベアリングに利用されることが多いです。

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ステンレスのメリット

ステンレスのメリット

ステンレスのメリットは以下のとおりです。

  • 清潔である
  • 剛性が高い
  • 熱に強い
  • サビに強い

順番に解説します。

清潔である

ステンレス製品は錆に強い特性を持っているため、塗装やメッキの必要がありません。

このため、水周りでの使用に適しており、衛生的に保つことが可能です。

また、食品工場での使用に適合する材質であるため、家庭のキッチンシンクなどにも広く利用されています。

この材料は、食品加工機械や化学工業プラントにも使用されるほど、多目的に適応可能です。

さらに、バフ研磨を施すことで、表面が滑らかになり、汚れの付着を防ぎやすくなります。

剛性が高い

ステンレス鋼は、炭素を含むことで高い強度を誇ります。

これは、一般的な鉄と比較しても優れていますが、熱処理(焼入れ)や含まれる元素によってその特性は異なる場合があります。

機械部品の製造においては、特に耐久性が求められる部分にステンレス鋼が選ばれることがあります。

この材料の使用は、その強度と耐久性を必要とする多くの工業において理想的です。

熱に強い

ステンレス鋼は耐熱性に優れており、500℃までの高温環境でも引張強度が大幅に低下しません。

しかし、500℃を超える温度では、特にマルテンサイト系とフェライト系のステンレス鋼は機械的強度が低下する傾向があります。

また、ステンレス鋼は熱伝導率が低いため、保温効果が求められる製品、例えば水筒などに適しています。

この特性が、飲料の温度を長時間保持するのに役立ちます。

サビに強い

鉄は酸素と反応して錆を生成しますが、ステンレス鋼にはクロムが含まれており、このクロムが優先的に酸化することで薄い保護膜を形成します。

この保護膜は不動態膜と呼ばれ、錆の形成を防ぐ効果があります。

さらに、この膜は物理的なダメージによって損傷を受けてもすぐに自己修復し、ステンレス鋼を錆びから守ります。

また、ステンレス鋼は耐候性にも優れ、汚染された空気環境でもその性能を維持します。

関連記事:【保存版】ステンレスの特徴6選|種類や鉄との違いについても解説

ステンレスのデメリット

ステンレスのデメリット

ステンレスのデメリットは以下のとおりです。

  • 加工硬化の性質を持つ
  • 放熱性に劣る

順番に解説します。

加工硬化の性質を持つ

ステンレスを曲げる加工を施すと、その硬度は大幅に増します。

このため、一度形状を変えた後に再度加工を試みるのは非常に困難であり、加工中のミスに対して許容度が低くなります。

放熱性に劣る

耐熱性はステンレスの利点ですが、逆に熱放散性は劣るため、熱をためやすい環境、例えばエンジンパーツなどには適していません。

また、加工中に生じる熱が逃げにくいため、工具の摩耗が早まり、その結果、工具の耐用年数が短くなるという問題もあります。

なぜステンレスは錆びにくいのか

なぜステンレスは錆びにくいのか

鉄が腐食し、「錆」となるのは、酸素が鉄と結合して酸化鉄を形成する過程で発生します。

一方、ステンレス鋼は鉄にクロムを添加することで、不動態膜という保護膜を表面に生成します。

クロムは酸素と結合する性質が鉄よりも強く、このため鉄が酸化する前にクロムが酸化し、保護的な酸化層を形成して表面を守ります。

この膜は傷が付いても迅速に自己修復され、錆の形成を抑制します。

この保護膜はわずか1ナノメートルの厚さであり、無色透明で目に見えないため、視認することはできません。

関連記事:ステンレスが錆びる原因|錆び防止のための対策も解説

ステンレスの用途

ステンレスの用途

ステンレス鋼は、その多様な用途により生産量が最も多い金属の一つです。これは日常生活のあらゆる場面で活用されています。

家庭用電化製品

日常的に使用される多くの家電製品にもステンレスが採用されています。その錆びにくい特性から、水を使う家電製品に特に適しています。

具体的には、冷蔵庫、食器洗い機、洗濯機、携帯電話などが該当します。

キッチンや家庭用機器

ステンレスはそのメンテナンスのしやすさと錆びにくさから、キッチンのシステムキッチン、ガスコンロ、バスルームなどで広く利用されています。

交通手段

軽量でありながら耐久性や強度が高いことから、自動車の部品、船舶、鉄道車両にも使用されています。

建築分野

雨、風、雪に強い特性を持つステンレスは、建物の基礎や構造体に重宝されています。ビルや工場のほか、ドーム球場、空港、プールなど、幅庫い建築物に活用されています。

ステンレス鋼の使用時の注意点

ステンレス鋼の使用時の注意点

ステンレス鋼の使用時の注意点は以下のとおりです。

  • メンテナンス
  • 環境への配慮
  • 溶接や加工の時の対策

順番に解説します。

メンテナンス

ステンレス鋼は耐食性が高いと評価されていますが、長期間にわたり汚れや異物が積もることで腐食や変色が生じる可能性があり、注意が必要です。

特に海岸沿いや工業地帯のように、塩分や化学物質の影響を受けやすい環境では、塩害や化学的腐食のリスクが増加します。

そのため、ステンレス鋼を使用する際は定期的な清掃や、必要に応じた保護膜の再塗布といった適切なメンテナンスが重要であり、これらの点を理解しておくことが推奨されます。

環境への配慮

ステンレス鋼は完全にリサイクル可能な素材であり、リサイクルされる際には新たなステンレス鋼の製造に再利用されます。

ただし、廃棄する際には、資源を無駄にしないよう適切な方法を選び、環境への影響を極力低減することが重要です。

特に廃材の適切な分別とリサイクルプロセスの実施は、環境負荷を減少させるために不可欠です。

適正な手順を守ることで、持続可能なリサイクルが可能となります。

溶接や加工の時の対策

ステンレス鋼の特性により、特定のタイプは溶接や加工が難しいことがあります。

たとえば、炭化クロムが析出しやすいタイプのステンレス鋼の場合、正しい溶接方法と適切な後処理技術が必要になります。

さらに、加工時に熱による変形や歪みを防ぐための工夫も必要です。

このため、溶接や加工作業にはステンレス鋼の種類とその特性を熟知している必要があり、専門的な知識と技術を持つプロフェッショナルに依頼するか、十分な訓練を受けてから取り組むことが求められます。

まとめ【ステンレスの種類を把握しましょう】

ステンレス鋼は、その耐食性と強度から多岐にわたる用途で使用されます。

主に、クロムを10.5%以上含むことで知られるステンレスは、種類によって特性が異なります。

代表的なものに、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系があります。

オーステナイト系は耐熱性と加工性に優れ、キッチン用品や建材に適しています。

フェライト系は磁性を持ち、耐酸化性が高いため自動車の排気系部品などに使用されます。

マルテンサイト系は硬度が高く、刃物などの耐摩耗性が求められる用途に適しています。

重要なポイント

  • クロム含有率:10.5%以上がステンレス鋼の基準。
  • オーステナイト系:耐熱性、加工性が特徴。キッチン用品に多用。
  • フェライト系:磁性を持ち、耐酸化性に優れる。自動車部品に利用。
  • マルテンサイト系:高硬度で、刃物などの耐摩耗性に適した材料。

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