チタンのデメリットは加工が難しいこと|メリットや種類についても解説
「チタンのデメリットってなんだろう」
「チタンって何に使われているのかな」
「チタンの種類が知りたい」
などとお考えではありませんか?
本記事では、チタンのメリット・デメリットと併せて、チタンの用途や種類、ステンレスの違いについて解説します。
この記事の監修者
藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士
チタンとは
チタン、化学記号「Ti」で知られるこの金属は、その軽さと耐火性により注目されています。
元素番号22を持つチタンは、1791年にイギリスの河川の砂から発見され、初めてグレゴール牧師によってメナカナイトと命名されました。
発見から3年後、ドイツの科学者クラプロートはこの鉱石から新しい金属元素を特定し、「Titans」(ギリシャ神話の巨人たちの名前)に因んでチタンと名付けました。
1910年にはチタンから酸素を分離する方法が開発され、1948年にはマグネシウム還元法を用いた大規模な生産が始まりました。
製造プロセスとしては、チタン鉱石からスポンジチタン、さらにチタンインゴットへと加工され、最終的に展伸材にされます。
この金属はその後、用途に応じて圧延や鍛造などの加工が行われます。
チタンの用途は広範にわたり、その独特な特性が様々な産業で価値を生んでいます。
チタンのデメリット3選
チタンのデメリットは以下のとおりです。
- 高価格
- 加工が難しい
- 剛性が低い
順番に解説します。
【デメリット①】高価格
チタンは他の金属に比べて価格が高いとされていますが、その理由は希少性にあるわけではありません。
実は、チタンの原料である酸化チタンの埋蔵量は全金属中で第5位と豊富です。
チタンが高価である主な理由は、この酸化チタンを純粋な金属チタンに精製する過程が複雑で手間がかかるためです。
製造プロセスの難易度が価格に反映されているため、チタンは高価な金属として市場に出されています。
【デメリット②】加工が難しい
チタンはその高い強度から、多くの産業で重宝されていますが、加工には特別な注意が必要です。
この金属の切削やプレス加工が難しいのは、その強度と活性が高い性質に起因しています。
活性が高いため、加工時には多くの熱が発生し、これが工具の磨耗を早める原因となります。
さらに、チタンの耐摩耗性が比較的低いため、加工中に生じるチップが発火しやすく、金属火災のリスクが高まります。
これらの課題にもかかわらず、チタンの優れた特性は、多くの用途でその利用価値を高めています。
【デメリット③】剛性が低い
チタンは銅やアルミニウムと比較して比剛性が低いため、比較的変形しやすい特性を持っています。
この性質により、チタンを使用する際は特に細長い形状の加工が難しいとされています。
この柔軟性は、加工技術において特定の制限を生じさせるものの、適切な用途には依然として高い価値を持ちます。
そのため、チタンの使用は適切な形状と加工方法によって最大の効果を発揮することが可能です。
チタンのメリット5選
チタンのメリットは以下のとおりです。
- 軽量
- 強度
- 耐食性
- 耐熱性
- 生体適合性
順番に解説します。
【メリット①】軽量
純チタンの比重は4.51、チタン合金の場合は4.8とされています。
この値を他の金属と比較すると、チタンは鉄の約60%、銅の約50%の重さしかないことがわかります。
この軽さは、特に航空宇宙、自動車産業、スポーツ用品などの分野での使用において、大きな利点となっています。
チタンの低い比重は、高い強度を維持しながらも重量を削減する必要がある多くのアプリケーションに理想的な選択肢を提供します。
【メリット②】強度
チタンは非常に高い強度を誇る金属で、その強度は重量比で鉄の約2倍、ステンレスの3倍にも及びます。
また、アルミニウムと比較しても約3倍の強度があります。
チタンはアルミに比べて重いものの、その優れた強度特性から、航空宇宙、自動車製造、医療機器など、多岐にわたる分野で重宝されています。
この金属の独特なバランスの良い特性は、強度が求められるアプリケーションにおいて、選ばれる理由となっています。
【メリット③】耐食性
チタンは空気に触れることで自然と表面に保護層を形成し、これが素材を錆から守る役割を果たします。
このため、チタンは非常に錆に強い金属とされています。
特に、海水環境における耐食性においては、プラチナに次ぐ強度を持つと評価されています。
これにより、鉄や銅といった他の一般的な金属よりも優れた耐久性を提供します。
この特性は、海洋探査、船舶建造、海水を利用する各種プラント設備など、厳しい環境下での用途に理想的です。
関連記事:チタンは錆びるのか?用途やメリット・デメリットを解説
【メリット④】耐熱性
チタンは他の一般的な金属と比較して顕著な熱耐性を持つ特性があります。
例えば、鉄が約1530度、銅が約1080度、アルミニウムが約660度で溶けるのに対して、チタンは約1660度の高温に耐えることができます。
さらに、500度の条件下でも高い強度を保持するため、原子力発電所や火力発電所などの高温環境で要求される部品製造に非常に適しています。
この耐熱性は、チタンを高温プロセスが求められる産業で重宝される理由の一つです。
【メリット⑤】生体適合性
チタンはその生体適合性が高いため、人体に安全な金属として広く認識されています。
特に金属アレルギーを持つ人々にとっても、チタンはアレルギー反応を引き起こしにくいとされ、その非毒性のためペースメーカーや人工関節などの医療用インプラントに広く利用されています。
金属アレルギーは金属と汗などの水分が反応してイオンが生成されることで発生しますが、チタンはこのようなイオンが非常に少なく発生するため、アレルギーのリスクが低いとされています。
このため、チタンは医療分野での安全性と信頼性を高める素材として重宝されています。
チタンの用途
初期の段階でチタンは主に航空機やロケットの製造に使用されることが多かった金属です。しかし、製造技術の進化に伴いコスト削減が進められた結果、その利用範囲は広がりを見せています。現在、チタンは原子力発電所、化学プラント、海洋建造物、建築用屋根材、ゴルフクラブ、人工関節など、多様な分野での需要が急増しており、その用途と可能性が拡大しています。この多才な金属は、その優れた特性を活かして幅広い産業で価値を提供し続けています。
電力・海水淡水化プラント
タービンブレード、海水淡水化装置、復水器
化学プラント・電解設備
電極、貯蔵槽、配管・バルブ、熱交換器、タンクローリー
自動車・二輪車
エンジン部品(コンロッド、バルブ、リテーナー、スプリング)、サスペンション、マフラー(排気管)
航空宇宙
エンジン部品、ロケット部品、燃料タンク、機体構造材
プレート式熱交換器
石油・天然ガスプラント、発電プラント、船舶、食品加工
海洋土木
鋼管杭防食カバー、海上橋脚、金具(密閉用ハンドル、キャッチクリップ)
建築・モニュメント
屋根材、内外壁、床材、発色建材、モニュメント、手摺
医療
人工骨、心臓弁、心臓ペースメーカー、手術用器具、歯根
民生品
メガネフレーム、時計、ゴルフ用品、カメラ、装飾品、中華鍋、自転車、登山用具、剣道面
チタンの種類
チタンの種類は以下のとおりです。
- 純チタン
- チタン合金
順番に解説します。
純チタン
純チタンはJIS規格により、1種から4種までの4つのカテゴリーに分類されています。これらの分類は鉄と酸素の含有量に基づいており、それぞれ異なる特性を持っています。
- 1種の純チタンは工業用に最も純度が高く、化学装置や石油精製装置に使用されることが多いです。このタイプは耐食性に優れていますが、強度は他のタイプに比べて低めです。
- 2種の純チタンは最も一般的に使用されるタイプで、工業用金属としての汎用性が高いとされています。
- 3種は強度が高いことが特徴ですが、工業用途には向かない場合もあります。
- 4種は純度が最も低いものの、純チタン中で強度と耐食性が高いため、加工に高度な技術が求められます。
これらの特性により、純チタンは多岐にわたる産業で重宝され、その用途は広範囲に及びます。
チタン合金
チタン合金はその特性に応じて、主にα型合金、β型合金、およびα+β型合金の3つのカテゴリーに分類されます。
- α型合金は、チタンにアルミニウムが添加された合金で、特に耐熱性が高く、極低温での破壊強度が他の型よりも優れています。この合金は幅広い温度範囲で安定した強度を保持しますが、加工性に難があります。
- β型合金は、チタン合金中で最も強度が高いとされており、高強度でありながら加工性にも優れています。これにより多様な用途に適応できる一方で、高温状態での強度維持は難しいというデメリットも持ち合わせています。
- α+β型合金は、α型とβ型の両方の特性を兼ね備えた合金で、強度、延性、靭性が高く、耐熱性にも優れています。製造過程での調整が比較的容易で、取り扱いやすさから幅広い用途で活用されています。
これらのチタン合金の種類ごとの特性が、その適用範囲と利用を決定づける要因となっています。
チタンとステンレスの違い
チタンとステンレスの違いを以下の項目で解説します。
- 物性比較
- 錆びにくさ
- 見分け方
順番に解説します。
物性比較
チタンはステンレス鋼に比べて軽量であり、熱が昇温しやすく、熱収縮が少ない特性を持っています。
耐力に関しては、純チタンとステンレス鋼との間には大きな違いはありませんが、ヤング率はステンレスの約半分となっています。
両金属は耐食性と強度の面で優れていますが、チタンの大きな利点は金属アレルギーを引き起こしにくいこととその軽量性です。
これらの特性から、チタンは腕時計やアウトドア用品など特定の製品に選ばれることが多いです。
一方、ステンレスは重さがありながらも高い美観性と手頃な価格で知られ、キッチン用品や家電製品など多岐にわたる製品で広く利用されています。
チタンは自動車、航空機、医療機器などの分野でその性能を発揮しています。
対照的に、ステンレス鋼は機械部品から家庭用品に至るまで、その適用範囲は非常に広いです。
錆びにくさ
チタンとステンレス鋼は共に不動態皮膜を形成することによって優れた耐食性を発揮しますが、塩化物イオンの存在下ではチタンの方がステンレス鋼よりも優れた耐食性を持っています。
これはステンレス鋼の不動態皮膜が塩化物イオンによって容易に破壊されるのに対し、チタンの不動態皮膜は塩化物イオンに対して非常に安定しているためです。
しかし、チタンにも弱点は存在し、塩酸や硫酸などの非酸化性の酸には腐食しやすいです。
一方で、硝酸のような酸化性の酸には、チタンとステンレス鋼の両方が不動態皮膜を安定させ、効果的に錆びを防ぐことができます。
このように、各金属の耐食性は環境や化学的条件に大きく依存します。
見分け方
ステンレス鋼には磁性を持たないオーステナイト系と磁性を持つフェライト系やマルテンサイト系の種類が存在します。
一方、チタンおよびその合金は非磁性の素材であり、この特性により特定の環境下での使用に適しています。
ステンレス鋼とチタンを区別する一つの方法は、磁石を使用することです。
磁石が金属に引きつけられる場合、その金属はステンレス鋼の可能性が高いですが、オーステナイト系ステンレスは加工によって磁性を持つことがあるため注意が必要です。
さらに、チタンとステンレスの区別には、重さの比較も効果的です。チタンの比重は約4.5で、ステンレスは約7.9となっており、同じ体積の場合、チタンはステンレスより約1.5倍軽いです。
この重量差を利用すれば、似たサイズの物同士を比較する際に、どちらの素材であるかを判定する手助けとなります。
関連記事:チタンとステンレスの違いとは?それぞれの特徴についても解説
まとめ【チタンのメリット・デメリットを理解しましょう】
今回は、チタンのメリット・デメリットと併せて、チタンの用途や種類、ステンレスの違いについて解説しました。
チタンのメリットは以下のとおりです。
- 軽量
- 強度
- 耐食性
- 耐熱性
- 生体適合性
それぞれ理解してから、使用しましょう。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
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