チタンコーティングのメリット7選|特徴や表面処理の種類についても解説
- 「チタンコーティングをするメリットを知りたい……」
- 「チタンコーティングにはどんな種類があるのかな」
などとお考えではありませんか?
本記事では、チタンコーティングのメリットと併せて、チタンコーティングの特徴や表面処理の種類について解説します。
最後まで読むと、チタンコーティングをする理由が理解できます。
この記事の監修者
藤原 弘一
1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。
保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士
目次
チタンコーティングとは
チタンコーティングとは、物体の表面にチタンまたはチタン合金の薄い層を施す処理のことです。
このコーティングは、物体の耐久性、耐摩耗性、耐腐食性を高めるために広く用いられています。
チタンコーティングの種類
チタン コーティングにはいくつかの主要な種類があり、それぞれに独自の特性と用途があります。以下にその主要な種類を紹介します。
- 物理気相堆積(PVD)
- 化学気相堆積(CVD)
- イオンプレーティング
- 溶射コーティング
- 電気化学コーティング(アノダイジング)
順番に解説します。
物理気相堆積(PVD)
物理気相堆積(Physical Vapor Deposition, PVD)は、薄いチタン層を基材の表面に付着させる一般的な方法です。
この技術は、工具や自動車部品、医療機器など、高度な耐摩耗性と耐腐食性が求められる製品に使用されます。
化学気相堆積(CVD)
化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition, CVD)では、ガス状の化学物質を用いてチタン層を形成します。
CVDは、PVDよりも高温で行われるため、より強固な結合を持つコーティングを生成できます。
イオンプレーティング
イオンプレーティングは、イオン化したチタンを基材に高速で衝突させることでコーティングを行う方法です。
この方法は、特に高硬度が必要な用途に適しています。
溶射コーティング
溶射コーティングでは、チタン粉末を高温で溶かし、圧縮空気や他のガスを用いて基材の表面に吹き付けます。
この方法は、大きな面積に対するコーティングや、特殊な形状の部品に適しています。
電気化学コーティング(アノダイジング)
アノダイジングは、電気化学的なプロセスを通じてチタンの表面に酸化チタン層を形成する方法です。
このコーティングは、耐食性を高めるとともに、装飾的な外観を提供することもできます。
それぞれのチタン コーティング方法は、適用される製品や求められる特性に応じて選ばれます。
例えば、工業用途での耐久性が重要な場合はPVDやCVDが選ばれることが多く、外観や特定の化学的性質が重視される場合はアノダイジングが適している場合があります。
【チタン】表面処理の種類
表面処理の種類は以下のとおりです。
- PVD・CVD
- メッキ
- 機能性膜
- 熱処理
- 表面加工
順番に解説します。
PVD・CVD
TiN(窒化チタン)、TiAlN(窒化チタンアルミ)、ClAlN(窒化アルミクロム)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、特殊DLC、SUSコート
メッキ
クロム、硬質クロム、ニッケル、テフロン無電解ニッケル、亜鉛、チタンカドミウム、カドミウム、金、銀、銅、
機能性膜
撥水コート、フッ素樹脂コート、AR(反射防止)コート、防錆、離型処理、非粘着コート、ハードコート、
熱処理
ガス軟窒化処理、ラジカル窒化、イオン窒化、浸炭処理、
表面加工
ブラスト、研磨、陽極酸化(SUS)、金型洗浄、装飾用途
チタンコーティングの特徴
チタンコーティングの特徴は以下のとおりです。
- 基材との密着力が強い
- 成膜温度が低い(400〜500度)
- 切削工具や金型の利用に、適切な硬度や耐熱性をもっている
順番に解説します。
基材との密着力が強い
チタンコーティングは基材との結合力が非常に強く、そのためコーティング層が容易に剥がれることが少なく、長期間にわたってその品質を維持することが可能です。
成膜温度が低い(400〜500度)
チタンコーティングは、物理気相堆積(PVD)と呼ばれる技術を用いて施されます。
この方法では、比較的低温の400〜500度でコーティングが行われるため、基材が熱によって変形したり、その性質が変わるリスクを最小限に抑えられます。
また、このプロセス中にチタンコーティングが金色になるため、その豪華で高級感のある外観から装飾品としても利用されます。
切削工具や金型の利用に、適切な硬度や耐熱性をもっている
チタンコーティングは、1700〜2000Hvという高い硬度を持ち、これにより切削工具の刃先の持続性や優れた耐摩耗性を提供します。
また、高温に対しても強い耐性を持っているため、ドリルの先端に使用することで、摩擦熱による変形を防げます。
さらに、チタンコーティングの膜厚はわずか1〜4μmと非常に薄いため、精密さが求められるビットなどのコーティングにも適しています。
これにより、精度を損なうことなく耐久性と性能を向上させることが可能です。
関連記事:チタンの用途とは?特徴や歴史も詳しく解説
チタンコーティングのメリット7選
チタンコーティングには多くのメリットがあります。
これらは、さまざまな産業や用途でのチタンコーティングの利用を促進しています。以下に主要なメリットを挙げます。
- 高い硬度と耐摩耗性
- 優れた耐腐食性
- 高温での性能維持
- 生体適合性
- 美観
- 精度の維持
- 熱変形の抑制
順番に解説します。
【メリット①】高い硬度と耐摩耗性
チタンコーティングは非常に硬く、表面の摩耗を効果的に防ぎます。
これは、切削工具や機械部品などの耐久性を大幅に向上させます。
【メリット②】優れた耐腐食性
チタンは腐食に強い素材であり、コーティングすることで基材の腐食を防げます。
これは、化学的に過酷な環境で使用される部品に特に有益です。
【メリット③】高温での性能維持
チタンコーティングは高温下でもその性質を維持するため、高温環境で使用される部品に理想的です。
【メリット④】生体適合性
チタンは生体内での使用に適しており、医療機器や人工関節などに広く使用されています。
【メリット⑤】美観
チタンコーティングはしばしば魅力的な金色になり、装飾品や消費者向け製品に豪華な外観を提供します。
【メリット⑥】精度の維持
膜厚が非常に薄いため、精密な部品の寸法や形状を維持しながらコーティングを施せます。
【メリット⑦】熱変形の抑制
コーティング自体が低温で施されるため、基材への熱影響を最小限に抑えられます。
これらの特性により、チタンコーティングは工業、医療、航空宇宙、消費者製品など、多様な分野で利用されています。耐久性、機能性、美観の向上など、その用途は広範にわたります。
チタンコーティングの用途
チタンコーティングの用途は以下のとおりです。
- 装飾
- 離型性向上
- 輻射熱軽減
- 耐久性・耐摩耗性
- 高生体親和性・抗アレルギー性
順番に解説します。
装飾
チタンコーティングは、独特の金色の反射色を持ち、金メッキや塗装による金色とは異なる独特の色合いを生み出します。
このユニークな色調のため、時計、食器、理美容用のハサミなど、特別な外観が求められるアイテムに広く採用されています。
離型性向上
樹脂成型品の製造における金型や、樹脂射出成型機のスクリューシャフトにもチタンコーティングが採用されています。
この用途では、製品と金型との間の離型性を高めることが主な目的で、製造プロセスの効率化と品質向上に寄与しています。
輻射熱軽減
窒化チタンコーティングの反射スペクトルは金(Au)に似ており、赤外線を効果的に反射する性質を持っています。
この特性を活かして、光源の近くで使用される部品に窒化チタンコーティングを施すことで、熱輻射の影響を軽減することが可能です。
また、現在のところ完全には解明されていないものの、口腔内のプラークに対する抗菌性に関する研究が進行中です。
これにより、窒化チタンコーティングは今後、さらに多様な用途への応用が期待されています。
耐久性・耐摩耗性
窒化チタンコーティングの最も一般的な応用は、切削工具や工業用部品、自動車やバイクのパーツなど、耐久性が求められる箇所に広く使用されています。
窒化チタンは、その高い硬度、優れた密着性、そして高靭性の特徴を持つため、金属加工用の刃物や、衝撃が頻繁に加わるパンチやダイなどの部品の寿命を延ばし、保護する目的で利用されます。
高生体親和性・抗アレルギー性
窒化チタンは生体適合性が非常に高いため、医療分野で広範に活用されています。
TiNは無毒で、アメリカ食品医薬品局(FDA)の基準をクリアしているため、手術用のナイフや人工関節、歯科用インプラントなどにも使用されます。
窒化チタンが骨と直接、強固に結合する能力が重要視されます。
また、金属アレルギーを持つ人々にも安全であるため、ピアスやネックレスなどの身につけるアクセサリーにも、その美しい外観以外の理由で利用されています。
まとめ【チタンコーティングの特性を活かしましょう】
今回は、チタンコーティングのメリットと併せて、チタンコーティングの特徴や表面処理の種類について解説しました。
チタンコーティングのメリットは以下のとおりです。
- 高い硬度と耐摩耗性
- 優れた耐腐食性
- 高温での性能維持
- 生体適合性
- 美観
- 精度の維持
- 熱変形の抑制
メリットを理解してからチタンコーティングしましょう。
株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。
時代にニーズに合わせ、最新鋭の設備と創業から約40年間培った、難削加工を可能とする職人の加工技術で様々な製品を生み出しています。
他社には負けない、業界トップクラスの技術があります。
お問い合わせは無料なので気軽にご連絡ください。