【専門家が解説!】インコネルの種類|用途や特徴についても解説

「インコネルってどんな種類があって、それぞれ何が違うの?」そんな疑問をお持ちではありませんか?

インコネルは、耐熱性や耐腐食性に優れた特殊なニッケル基合金で、化学プラントや航空宇宙分野など過酷な環境で活躍する頼もしい素材です。

しかし、種類が多いため、どれを選べばよいか迷ってしまうこともあるでしょう。

この記事では、インコネル600、625、718、X750など、主要な種類の特性や用途をわかりやすく解説し、最適な選択をサポートします。

また、加工時の注意点や活用シーンも詳しく紹介。

これを読めば、インコネルについての疑問が解消され、用途や環境に応じた適切な選択ができるようになります。

あなたのプロジェクトに最適なインコネルを見つける第一歩を、ぜひこの記事から始めてください!

この記事の監修者

藤原 弘一

1986年(有)藤原鉄工所(現フラスコ)入社、1992年代表取締役就任。
時代のニーズに適合した最新鋭設備と長年蓄積した職人技的加工技術を融合させ、顧客の信頼を築いた会社。

保有資格:司法書士、行政書士、宅地建物取引主任者、2級小型船舶、4級無線技士

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インコネルとは

インコネルとは

インコネル(INCONEL®)は、Special Metals社(旧International Nickel社)の商標で登録されているニッケル基合金の一種です。

この合金にはクロム、鉄、ニオブ、モリブデンなどの元素が加えられており、それぞれの配合割合によって異なる種類に分けられます。

代表的なものとして、インコネル600(Alloy 600)、インコネル625(Alloy 625)、インコネル718(Alloy 718)などがあります。

関連記事:【保存版】インコネルとは?種類や特徴についても解説

インコネルの種類

インコネルの種類は以下のとおりです。

  • インコネル600(Alloy600)
  • インコネル625(Alloy625)
  • インコネル718(Alloy718)
  • インコネルX750(Alloy X750)

順番に解説します。

インコネル600(Alloy600)

インコネル600は、優れた耐腐食性を持つ合金として広く知られています。

特にアルカリ性溶液や酸化環境下でその高い耐久性を発揮します。

この特性は、主成分であるニッケル(Ni 72.0%以上)とクロム(Cr 14.0~17.0%)の高い含有率に起因しています。

また、アンモニア環境に強く、塩素イオンによる応力腐食割れや乾燥塩素および塩化水素による腐食にも耐性を持っています。

このような特徴により、インコネル600は過酷な条件下でも信頼性の高い材料として使用されています。

インコネル625(Alloy625)

インコネル625は、塩化物溶液環境下でも孔食や隙間腐食が起こりにくいという特性を持っています。

この優れた耐腐食性は、主成分であるクロム(Cr 20.0~23.5%)とモリブデン(Mo 8.0~10.0%)の含有によるものです。

さらに、高温の海水や汽水、酸化性化学薬品に対しても非常に高い耐久性を示します。

また、ニオブ(Nb+Ta 3.15~4.15%)の含有により、熱処理や溶接後でも粒間割れが生じにくいのが特徴です。

このため、インコネル625は過酷な環境下での使用に適した信頼性の高い素材とされています。

インコネル718(Alloy718)

インコネル718は、クロム(Cr 17.0~21.0%)とモリブデン(Mo 2.8~3.3%)の高い含有量により、極端な高温や低温の環境下でも優れた耐孔食性と耐腐食性を発揮します。

塩化物イオンによる応力腐食割れや溶接割れが起こりにくいのも、この合金の大きな特徴です。

また、焼鈍後の加工性が良好であるため、複雑な形状や高精度が求められる用途にも適しています。

こうした特性により、インコネル718は、過酷な条件下での使用に信頼される素材として広く活用されています。

インコネルX750(Alloy X750)

インコネルX750は、高温および低温環境での幅広い腐食に対して優れた耐性を備えており、応力腐食割れにも強い合金です。

主成分であるニッケル(Ni 70.0%以上)やクロム(Cr 14.0~17.0%)に加え、チタン(Ti 2.25~2.75%)やアルミニウム(Al 0.4~1.0%)を含有することで、析出硬化による高い硬度を実現しています。

また、高温下での引張強度や破断強度、耐クリープ性、耐酸化性にも優れており、過酷な条件下で信頼性の高い素材として広く利用されています。

インコネルの加工時の注意点

インコネルの加工時注意点

インコネルは非常に硬く耐熱性に優れた合金であり、その加工には細心の注意が必要です。

たとえば、インコネル600では、柔らかい工具を使用すると表面が剥がれたり工具が摩耗する可能性があります。

また、切削量が過剰になると、表面に傷がつくリスクがあります。

インコネル718の場合、大きな切削力が必要となり、工具の刃先が欠けたり切削が困難になることがあるため、加工前に工具の交換や調整が求められます。

インコネル825は主に高温環境で使用されるため、加工時には十分な冷却が必要です。また、切削速度が遅すぎると仕上がり表面に欠陥が生じる場合があります。

インコネルX-750は硬度が高く切削力も大きいため、適切な工具を選び、加工量を調整することが重要です。

さらに、加工中の冷却を徹底し、刃先の摩耗を防ぐために工具を定期的に交換する必要があります。

関連記事:【保存版】インコネルの加工の特性|加工方法のポイントも解説

インコネルの用途

ここでは、主なインコネル合金とその代表的な用途をいくつかご紹介します。

  • インコネル600:化学プラントの部品として広く利用されています。
  • インコネル601:高温環境での酸化およびカーボン化に強いため、高温有機化学プラントに適しています。
  • インコネル690:硝酸を使用する環境や蒸気発生器、核廃棄物処理施設などで使用される耐腐食性の高い材料です。
  • インコネルX750:航空宇宙分野や産業用ガスタービン部品に適した合金です。
  • インコネル792:アルミニウムの含有量を増やすことで高温での耐食性を向上させた合金で、ガスタービンのブレードや化学ロケットの燃焼室部品に使用されています。

インコネルの特徴

インコネルの特徴

インコネルの特徴は以下のとおりです。

  • 刃先に溶着しやすい
  • 耐熱性が高い
  • 加工硬化が起こりやすい

順番に解説します。

刃先に溶着しやすい

インコネルは工具素材との相性が高いため、加工中に発生する粉が刃先に付着しやすい性質があります。

この刃先への付着は、工具の切れ味を低下させる原因となり、加工表面の仕上がりを悪化させる可能性があります。

また、切れ味の低下によって加工時の熱が増加し、結果的に工具が損傷するリスクも高まります。

このような問題を防ぐためには、クーラントや切削液を適切に使用し、加工熱を抑えることが重要です。

これにより、工具の寿命を延ばし、良好な加工結果を得ることが可能になります。

耐熱性が高い

一般的に金属は高温環境下で原子間距離が広がるために熱膨張が起こり、それに伴い強度が低下します。

しかし、インコネルは他の金属や合金と比べてこの傾向が小さく、高温でも強度を維持しやすい特性があります。

インコネルの種類によって異なりますが、約700度の高温でも高い強度を保つことができるのが特徴です。

この優れた耐熱性により、インコネルは極端な高温環境下での使用に適しています。

加工硬化が起こりやすい

金属に外力が加わると、弾性変形と塑性変形という2つの変形が発生します。

一定以上のひずみが加わると、弾性変形から塑性変形へと移行します。加工硬化とは、この塑性変形により原子の配列が乱れることで、結果として金属が変形しにくくなる現象を指します。

インコネルは、この加工硬化が発生しやすい材料として知られています。

そのため、インコネルを加工する際には、この特性を考慮した作業が求められます。

まとめ

インコネル(INCONEL®)は、耐熱性・耐腐食性に優れたニッケル基合金で、Special Metals社の登録商標です。

主な種類として、インコネル600、625、718、X750があります。それぞれ異なる成分構成と特性により、過酷な環境での信頼性が求められる用途に活用されています。

インコネルの主な種類と特徴

  • インコネル600
高い耐腐食性を持ち、アルカリ性や酸化環境に強い。化学プラント部品に適用。
  • インコネル625
塩化物溶液中でも耐腐食性を発揮。高温海水や酸化性薬品にも適し、溶接後の信頼性が高い。
  • インコネル718
高温・低温環境下で優れた耐孔食性を発揮。加工性に優れ、航空宇宙分野で活躍。
  • インコネルX750
析出硬化型で高温下の耐久性が強み。産業用ガスタービンや航空宇宙用途に使用。

加工時の注意点

  • 高硬度で工具の摩耗が激しいため、適切な切削工具の選定が必要。
  • 冷却剤を使用し加工熱を抑えることで、工具寿命の延長と仕上がり向上が可能。
  • 加工硬化しやすいため、適切な切削速度と加工量の調整が重要。

主な用途

  • 化学プラント、ガスタービン、核廃棄物処理施設、航空宇宙分野など、高温・腐食性環境下の部品。
  • インコネルは、高い信頼性が求められる分野で不可欠な素材であり、種類ごとの特性を理解することが重要です。

株式会社フラスコでは、昭和48年の創業依頼、一般産業用機械部品の設計・製作・組立をはじめ、チタンやタングステン、ジルコニウムなどの金属加工を行なってきました。

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